FLASH diss.

目的

この研究は全部嘘くさく、必要な実験が十分に成されていないのに多くがアクセプトされ、出版されているように見える。なので可能な限り酷評することとする。これは個人的な趣味の領域の酷評である。

評価基準

評価値評価意味
S不幸にも良い論文である。 線量測定も良い。結果も良い。文句はない。
A認めたくないが、信じよう。 問題はない。
Bしょうがないから、ちょっとは信じよう。怪しい。しかし、結果で興味深いものがある。
C信じたら駄目なヤツ。 限りなくゴミ。何かしら間違った解析や結論を導いてしまっている可能性 がある。
Fゴミ。 完全なるゴミ。自信を持って却下。反論の余地なし。

記事

メインIDPOST論文概要評価評価の理由
2021/08/20(金)FLASH照射について その1 ISOTOPES, 2021, 70 巻, 4 号, p. 279-289.C著者ら自身が理解していない。
2021/08/22(日)FLASH照射について その2Favaudon V, Caplier L, Monceau V, et al. Ultrahigh dose-rate FLASH irradiation increases the differential response between normal and tumor tissue in mice [published correction appears in Sci Transl Med. 2019 Dec 18;11(523):]. Sci Transl Med. 2014;6(245):245ra93. doi:10.1126/scitranslmed.3008973 C57BL6の肺領域にFLASH(4.5MeV電子線、60Gy/s)照射すると、同等線量の従来の放射線照射法(137Cs、662KeVガンマ線もしくは200KVpX線)の場合に比べて肺実質に起こる線維化、肺胞壁の肥厚やアポトーシスが有意が抑制された。また、HBCx-12細胞(マウスのTNBC??、Mammary fat pad transplantation)とHEp-2細胞(頭頸部がん細胞、皮下注射)の腫瘍増殖は両者の照射方法により同等程度抑制されており、さらに、transpleural injection(胸腔内注射)によりTC-1細胞(マウス肺がん細胞、Luciferase(+))を移植されたマウスの生存率は、FLASH照射と従来の照射で同等程度延長した。 B線量測定のデータはなく、統計もすこし怪しい。
2021/08/23(月)FLASH照射について その3Montay-Gruel P, Petersson K, Jaccard M, et al. Irradiation in a flash: Unique sparing of memory in mice after whole brain irradiation with dose rates above 100Gy/s. Radiother Oncol. 2017;124(3):365-369. doi:10.1016/j.radonc.2017.05.003 脳内に設置したTLDにより吸収線量を測定した結果、10Gy/1.8μ秒の電子線パルス(4.5MeVか6MeV)と、0.1Gy/s(=6Gy/min)とで、吸収線量に大きな差はなかった。次に、マウスの認知能力を新しい物体を認識するまでの速さで測定した結果、60Gy/s(=3600Gy/min)以下の線量率でその認知能力は統計的に有意に低下した。しかし、それ以上の線量率では非照射群と同等であった。海馬の BrDUの取り込み(de novo neurogenesisの指標)を解析した結果、非照射群と比べて10Gy/1pulse(10Gy/1.8μs)と0.1Gy/s(6Gy/min)では有意に低下するが、10Gy/1pulse(10Gy/1.8μs)と0.1Gy/s(6Gy/min)を比較した場合、0.1Gy/s(6Gy/min)照射群でBRdUの取り込みが有意に低かった。A残念ながら問題がなかった。
2021/09/04(土)FLASH照射について その4Montay-Gruel P, Bouchet A, Jaccard M, et al. X-rays can trigger the FLASH effect: Ultra-high dose-rate synchrotron light source prevents normal brain injury after whole brain irradiation in mice. Radiother Oncol. 2018;129(3):582-588. doi:10.1016/j.radonc.2018.08.016 10GyのFLASH-X線照射(ESRF, 102KeV, 全スライスにわたる線量率の平均値は37Gy/s、スライスあたりの線量は12000Gy/s)されたマウスの照射2ヶ月後のRecognition Ratio (=(time spent on the novel object – time spent on the old object)/(total exploration time) x 100)は、照射時とほとんど同等であったが、通常線量率のX線(0.05Gy/s、実効エネルギーの記載なし。おそらく、225 keV, 13 mA, with a 0.3 mm copper filte)照射時は両者に比べて顕著に低下した。これは照射6ヶ月後でも同様の結果だった。抗BrDU抗体を用いた免疫染色により海馬領域の細胞の増殖の指標(Cell proliferation cluster)を評価すると、両方の照射によりBrDUの取り込みは非照射状態に比べて有意に低下したが、FLACH-X線照射後の BrDUの取り込みは従来の線量率のX線照射よりは高かった。照射GFAPの免疫染色によりAstrogliosis(これは中枢神経細胞の損傷の指標になるらしい)を評価した結果、FLASH-X線照射時のAstrogliosisの発生は非照射時と比べて有意ではないが、従来の線量率のX線照射時は、 FLASH-X線照射時と非照射時に比べて多くのAstrogliosisが発生した。C線量測定のデータがなく、利用した解析方法や解析自体が怪しい。おそらく5の論文とペアーの小出し研究(サラミスライシング)
2021/09/05(日)FLASH照射について その5Vozenin MC, De Fornel P, Petersson K, et al. The Advantage of FLASH Radiotherapy Confirmed in Mini-pig and Cat-cancer Patients. Clin Cancer Res. 2019;25(1):35-42. doi:10.1158/1078-0432.CCR-17-3375照射(電子線)約6ヶ月後のミニブタの皮膚組織をHE染色で解析した結果、FLASH照射後の皮膚は非照射時とほとんど同等の組織構造だったが、一方の通常の照射では皮膚組織に壊死などが顕著に見られた。また、FLASH照射後のhair follicleの数は、非照射と同等であったが、通常のX線照射後では非照射に比べて減少した。FLASH及び通常のX線照射後の皮膚の有害事象をスコア化して解析した結果、通常のX線照射では脱毛、肥厚などが治療の初期に見られ、一部の症例では約6ヶ月後くらいに壊死なども見られたが、FLASHでは照射約6ヶ月後に脱毛が起こった。ネコ(N-6)のSCCを22から34GyのFLASH照射により治療し、その後16ヵ月間フォローアップした結果、1例のみ再発が見られ、他の腫瘍はCompletely Responseされた。F線量測定の結果が載っていないし、適切なコントロールもない。 おそらく4の論文とペアーの小出し研究(サラミスライシング)
62021/09/05(日)FLASH照射について その6Buonanno M, Grilj V, Brenner DJ. Biological effects in normal cells exposed to FLASH dose rate protons. Radiother Oncol. 2019;139:51-55. doi:10.1016/j.radonc.2019.02.009陽子線(5.5 MV、0.05Gy/s、100Gy/s、1000Gy/s)をヒト肺線維芽細胞株IMR90細胞に照射し、コロニー形成法による生存率、gーH2AXリン酸化(WB)によるDNA損傷形成、照射1ヶ月後のb-gal染色によるSenescenceの発生、TGF-bの発現を解析した。その結果、FLASH照射はIMR90細胞の生存率、H2AX線リン酸化に影響は与えなかった。しかし、1ヶ月後のSenescenceの発生と、TGF-bの発現はFLASH照射群で有意に低下した。S異論なし。
72021/09/06(月)FLASH照射について その7Simmons DA, Lartey FM, Schüler E, et al. Reduced cognitive deficits after FLASH irradiation of whole mouse brain are associated with less hippocampal dendritic spine loss and neuroinflammation. Radiother Oncol. 2019;139:4-10. doi:10.1016/j.radonc.2019.06.006従来と同等の線量率の電子線(電子線、16もしくは20MeV、両者とも0.13Gy/s)を照射されたマウスの新しくケージ内に置かれた物体の場所を認知する能力と新しい物体自体を認知する能力は、非照射群とくらべて統計的有意に低下したが、FLASH照射(電子線、16もしくは20MeV、それぞれ200もしくは300Gy/s、このくらいの線量で神経系に炎症が起こるらしい。)されたマウスではこれらの認知機能に影響がなかった。海馬の樹状突起の密度について解析すると、神経末梢(Apical Dendrites)の密度は従来の線量率の電子線照射を受けた群では有意に低下したが、FLASH照射群では非照射群と同等であった。一方、基底端における樹状突起の密度(Basal Dendrites)に関しては、どの照射群でも統計的有意差はなかった。海馬におけるマイクログリア(CD68陽性細胞)を免疫染色により解析した結果、従来の線量率の電子線照射を受けた群ではその数が有意に上昇したが、FLASH照射群では非照射群と同等のCD68陽性細胞数だった。照射後に脳内で発現する炎症性サイトカインを測定した結果、IL6、IL1b、KC/GRO、IL4の発現量増加が従来の線量率の電子線照射群に比べてFLASH群では低かった。C統計ミス。N数水増し。

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