シングルセルRNAシークエンスの外注で日本の科学技術の衰退が半端ではないことを思い知る

日付;2023/02/04(土)
追記;2023/02/19(土)

2週間くらい前にシングルセルRNAシークエンス(scRNA-seq)のライブラリ調整を行い、次はサンプルのシークエンスを行わなくてはならない。研究所にシークエンサーは無いので、これを外注する必要がある。基本的には多くの施設で外注だろうと思う。たとえ大学内にシークエンサーを持っている部署があったとしても、なんやかやで外注みたいな形になるはず。

昨年の初めてscRNA-seqにiLacという会社にシークエンスを外注したが、その結果とても残念なことが起こってしまった。しかも今回はFeature Barcodingを使ったちょっとしたCITE-seqも行っている。単に遺伝子発現ライブラリのシークエンスではなく、素人から見たら複雑になるっていうことだ。そうだとすると、やはり技術的にも熟練している業者に頼んだほうが良い。

ということで、10xGenomicsだったり、代理店の人に教えてもらった業者を中心として、いろいろとオンラインのミーティングで話を聞いてもらい、依頼するシークエンスの技術的な事や価格の見積もりをとって見て感じたことを忘れる前に書こうと思う。

まずは10xGenomicsに相談

まずは10xGenomicsにどこかおすすめのシークエンス受注業者があるかどうか聞く。このシークエンスのために、これまで10xGenomicsや10xGenomicsの代理店である株式会社スクラムの主催するセミナーに参加してきた。そして、昨年の残念なシークエンスの経験からそのセミナーで「ライブラリ調整キットの値段だけでなく、その後のシークエンスについても紹介してくれ。」ということをアンケートに書いていた。実はこれをアンケートに書いたことを忘れていて、そのアンケートを読んだ10xGenomicsの方からメールが来たことでそれを思い出した、というところだ。

というか、ちょっと余談だが、この10xGenomicsという会社は本当にすごい会社だと思う。なんというか、サポートがすごく良い気がする。やっぱり、数年前まではscRNA-seqは非常に特殊な技術であり、これを普及するためにはこのように自分の会社の製品のサポートをしっかりして、自分たちでも実験を最適化しながら実験の相談にのるというは必要だったんだろうとは思う。でも逆に言えば、なにか有望そうな新しい技術を普及させようとしたら、自分たちで実験も行うことで様々な実験条件を最適化し、セミナーも開催して客を呼び込み、客の相談にのって、実験について提案できるまでの経験を積む必要があるのだろうと思う。自分が現在所属している組織でも、とあるマウスを普及させようとした場合は、研究、ビジネス問わず、こういう努力が必要であると理解できた。そして公益財団法人という立場上、そういったことはやりにくいのだろうが、そんなことを言っている状態で自分のところのマウスをみんなに使ってもらおうとか、本当にナメてんじゃねぇって感じがする。自分たちでもロクにアプライしたこともないのに、何が「それはXX研でやるべき研究ですか?」だ。こういうことは、まずは圧倒的なシェアを取れる物凄いものを開発してから言ってほしいものだ。今のものもそこそこ良いものかもしれないが、そんなもの無くたって研究はできる。だから、小さくても良いから色々なことをやって宣伝しなければ一生カスのままだと思うのだが。大したこともないのに、選んでいる余裕なんかない。それを使ってまずは論文を量産するくらいは必要である。10xGenomicsのようにまずは自分のところで十分な経験も積まなければ、おすすめのアプリケーションも勧めることもできないし、トラブルシューティングもできないし、それに誰も買ってくれないだろうが。その証拠に、そのシェアをNSGマウスが圧倒的に占めているではないか。

ということで、忘れていたころに10xGenomicsから「アンケートを見たんで、製品の紹介とアンケートの内容について話をしたいのだが」というメールが届き、「製品の紹介は要らないからアンケートの内容の話をしよう。」ということでZoomで話をすることになる。そしてそこでは昨年の起こった問題とこちらの要求である「どこかおすすめのシークエンス業者はないか」という相談をした。その結果、やっぱり10xGenomics認定のシークエンス業者があるらしい。そういうものがあるならば、なぜ10xGenomicsははじめから紹介してくれなかったのだろう。お陰で某東大が使っているからという理由でロクでもない業者(というか担当者)を使うことになってしまったじゃあないか。もちろん、10xGenomics認定でなくてもしっかりとした経験と技術を持っている企業はたくさんあるので、技術やサービスのクオリティーに問題がなければ、どこを使っても良いとは思うが。

認定の業者

10xGenomics認定の業者として、KOTAIバイオテクノロジーズ(KOTAIバイオ)、かずさゲノムテクノロジーズ(かずさ)、アゼンタを紹介された(もしかしたら、今はもっと増えているかもしれない)。それぞれベンチャー、かずさDNA研究所、中国企業である。まず、この3社についてscRNA-seq、Feature Barcodingともに技術的な問題はほぼ皆無である。後述するように、こちらが求めている技術的な知識や経験を持つかどうかは、特に高額な解析を依頼する業者を選ぶときは重要なポイントである。個人的には、中途半端な業者はそもそもscRNAseqの技術的な事をよく理解していない場合がある(と思っている。推測だが。)ためだ。残念ながら後に出てくるLACやノボジーンで担当してくれた者はそうだった。でなければ、あれだけ説明したのに適切なfastqファイルを作成できなかったり(bcl2fastqや、もっと楽なcell ranger mkfastqを使えない。使ったことがない。)、無駄にXPモードで読んだり、あれだけオンラインミーティングで話していたのに正確に仕様書を作れなかったりはしないだろう。

コスト的な観点からこの3社を見ると、アゼンタが圧倒的に良い。これはNovaseqといった大きな装置で、主にマルチプレックスで読むかどうかに依る気もするが、もはやここは早い・安い・上手である。もしも自分で金を出せ、といわれたら、圧倒的にアゼンタである。そして次に良いのがかずさゲノムテクノロジーズである。というか、かずさゲノムテクノロジーズもかなり良い。なんやったら発注までの手続きが単純明快なので、scRNA-seqを含む一般的なシークエンスで、資金が潤沢で、どうしても国内発の業者を使いたいならばかずさゲノムテクノロジーズが良い。一方、今後どうなるんだろうなっていうこととして個人的に思うのは、ここはなぜがNovaseq 6000を持っていないことである。現時点では問題ないが、その場合は大量のリードになってくると、コストが上がってしまう。このまま行けば小規模の研究用途ってことになる。そして、ちょっと期待はずれだったのがKOTAIバイオだった。正直、自分がかつて世話になった大学のベンチャーなので、とても期待していた。というか、正直ここに受託するつもりだった。しかし、蓋を開けてみれば、主観だが、若干「盛り上がり」に欠ける対応だったことがけっこう残念だった。これが10xGenomicsだったらどうだろうか。無駄ではあるが、モチベーションを上げてくれる話をしてくれるだろう。やっぱり、そういう「ポジティブに見える」っていう雰囲気は重要だとわかった。それに加えて現実的な問題もあった。それはDNBSEQというMGI社のシークエンサーを使っており、なぜか対応してくれるリード数が他の会社よりも圧倒的に低かった。そして、目的のリードを読もうとすると圧倒的に値段が高くなる。それはダメだ。知識的にも経験的にもどうも良さげだったので、とてもがっかりしてしまった。ミーティングしてくれた先生が盛り上がりに欠けていたように感じたのは、自分がエセ関西弁だったためだろうか。ほんと、エセ関西弁はダメである。そういった状況のなか、マルチプレックスで価格を抑えることができるか?という質問を後にメールで行ったが、そのシオ対応っぷりがすごかった。「マルチプレックスすると目的のリードに達しないので、依頼を受けれません。」の一言で終わってしまった。ということで、がっかりしながら、そして着実に候補から脱落した。でも、逆に自分のところで出来ることと出来ないことをしっかりと理解しているということでは非常に良かった。

次にミーティングを行ったのがアゼンタである。アゼンタは中国の企業で、正直に言えば、なんとなく良いイメージが持てなかった。しかし、ミーティングをしてみれば、圧倒的にマンパワーがあり、シークエンスの費用が安く、Feature Barcodingを用いたscRNA-seqなど、よく対応していることがわかった。今回ミーティングをした他の業者との違いは、シークエンスは10xGenomicsのインストラクションにある通りに行っているようだった。その方法とは3′ GEX(Gene EXpression)ライブラリとFeature Barcodingライブラリを4:1で混ぜてシークエンスするという方法である。KOTAIバイオなどではそういうことはやっていないということを言われた。確かに、別々にやっても細胞のインデックスシークエンスが同じ以上CITE-seqできる。また、アゼンタは実際にはサンプルは日本のラボでNovaseq 6000を使ってシークエンスしていると言う。オンラインでユーザー登録をして、適切なサンプルシートと作成したライブラリをドライアイスに詰めてそのラボに送るだけで良いってことだった。オンライン登録は正直面倒だが、それさえやってしまえば良いってことになる。サポートも日本のスタッフがやっているので随分と安心できる。それに加えて、値段が安い。小さなラボの者にのって、値段が2/3くらいなのは大きすぎる検討要素だと思う。技術的な特徴としては、アゼンタは大量のシークエンスを行うことができるので、それが必要な大量の抗体、すなわち、Universal TotalSeq antibodyを使ったCITE-seqを行うことができるということだった。後述するかずさとの話から学んだのだが、どうやらCITE-seqをやる場合は抗体あたり2500リードくらいあれば、その抗体を認識できるようだ。10xGenomicsのインストラクションには最低5000リード必要である旨が書いてあるが、それは抗体をしっかり認識するために十分すぎる量としてその値を載せているらしい。ただし、Universal Totalseq antibodyは抗体の種類が140個くらいの抗体カクテルなので、サンプルあたり2500×140=350000リード、10xGenomicsに従うならば、その2倍以上のリードが必要になり、それを混ぜているとどうしても3’GEXのリードが不十分になる可能性があるのだろう。こういうことに対応している、とと言っていた。

次にミーティングしたのがかずさである。ここもとても良い企業である。ここは100%純系の日本企業であり、年度末にみんな一気に注文するため年度末のシークエンスは納入が遅れてしまうことがある。ここはKOTAIバイオと同様、Feature Barcodingのライブラリを3’GEXライブラリに混ぜていないようだ。正直これが自分にとってFeature Barcodingを使ったscRNA-seqの解析は初めてなので、4:1で混ぜるのが良いのか、別にシークエンスするのが良いのかわからない。ただし、結局のところ他のサンプルとマルチプレックスしてコストを削減するのだから、推奨通りに4:1で混ぜてしまっても結果的にOKな気がする。ここの最大の違いは、Novaseq 6000を持っていないことだ。Nextseq 500とNextseq 2000とDNBSEQでやっているらしい。同じくDNBSEQを使っているKOTAIバイオと比べても、そのシークエンス価格が圧倒的に易そうである。大丈夫ですかKOTAIバイオは。思い入れがある大学なだけに、なんとかして抜きん出てほしいところである。ここで勉強になったことは、Nextseq 2000ではリードが上手く行かない(なんて言ってたか忘れた)ことがあるらしいってことである。なのでNextseq 500を推奨された。残念ながら、これらはたしか100bpで読むので、5′ GEXライブラリでTCRやBCRに加えてエンハンサー領域も解析する場合はリード長が足りないって場合もありそうだ。でもやっぱり、主観的に非常に良い感じだった。ケツモチがプロメガってのがやっぱり強い。それに、代理店が必要な場合は好きなところに対応できるっている感じだった。

結局のところ頼んだ業者

時にはミーティングの時間に遅れてしまい、これまで散々みんなに迷惑をかけながらも非常に丁寧に対応してもらっておきながら、なんと選んだのはノボジーン。

ノボジーンはシンガポールの企業であり、研究所に来ている代理店の人とノボジーンのマネージャーの人が売り込みに来たのをきっかけに知った。代理店の人が進めてくるので、別に拒むものでもなかろう思ってミーティングを組んでもらったのがきっかけである。そして話を聞いてみたら、価格もアゼンタの次に安く、技術面でも良く知っており、非常に良かった。言うても価格はアゼンタには及ばなかったが、如何せん現所属ラボでの信頼性が圧倒的に高かった。。

このノボジーンはシンガポールのA*STARがケツ持ちである。そのA*STARの連中はいちもここの業者を使っているらしい。現所属ラボではなんとA*STARのラボと共同研究を行っており、今年もそれを続けていくらしい(詳しい話を全くしてくれないので、よく知らんが)。ボスがA*STARのラボとのミーティングのときについでにノボジーンについて聞いてくれて、技術的にもセキュリティー的にかなり信頼がおけそうだ、ということになった。個人的にも技術的には問題がなさそうだという感じの印象を受けた。その決断は圧倒的に早く、また、年度も終わりかけであり納期も随分と早いということもあり、あっさりとここに決まってしまった。ここもマンパワーもシークエンサーの性能もこれまでミーティングをしてきた日本企業よりも圧倒的に高く、多くのリード数にも対応してくれた。個人的にちょっと残念なのが値段であり、アゼンタには全く及ばないことだ。というか、こうなってくると何故アゼンタはあんなに安いのだろうか。人件費だろうか。どうしてもボスは中国を好いておらず、逆にA*STARを信頼しているためここに決まった感じがある。ミーティングをしっかり行えば、自分ならばアゼンタのほうが良いように思うけどな。というか、セキュリティー気にするほど大した研究やってねえわ別に。

ただし、ノボジーンは10xGenomicsの認定を受けていない。はっきり言うが、結果としてかなり大きなマイナスポイントであると今は理解している。次に色々と問題だったことを述べるが、ボスがどう言おうと、自分はここを二度と利用しないだろう。ノボジーンの担当者は技術的な部分をしっかりと理解していたと前述したが、それは完全に見かけだけ、こちらの話にうなずいていただけ、単にYesと言っていただけだったことが後ほど判明する。最悪である。A*STARがケツモチかなんか知らんが、もう自分は二度とことを利用しないと決めつつ、以下に一応のフォローだけしておく。これは企業が悪いのではなく、担当したノボジーンシニアアカウントマネージャーH氏の能力があまりにも低い、ということがこうなってしまった原因の一つであることは確かである。しかしながら、こんな野郎を野放しにしておく企業も悪い。なんとかしろ。お陰でこっちは2週間以上ロスしている。書いていて苛ついてきた。

まさかの業者変更

シークエンスを依頼する会社も決まったことだし、上記の理由からノボジーンで納得している。年度末だし、早速行動に移らないと年度内に納品できなくなる。そういうことで、早速、発注とサンプルシート作りに取り掛かる。そして、ここで最悪なことに気がつく。なんと、Feature Barcodeのライブラリが全く見積に反映されていない。

は?

オンラインのミーティングであれだけ説明したのに?スライドまで使って、実験の概要や使った3′ GEXと3′ Feature Barcodeライブラリで使ったサンプルインデックスのウェル番号や、実験のデザインも示したのに?というか、ミーティングでわかったような感じだったのに?

正直に言えば、ミーティングの結果送られてきた見積書をしっかりチェックしなかった自分も悪かったとは思う。でも、あれだけちゃんと説明して、そして、たしかに向こうさんは「大丈夫。問題ない。」と言った。なので、自分も「まぁ、大丈夫だろう。」といかいう、今思っても油断として言いようのない考えに至ってしまったのだろう。不幸中の幸いとしては、よくオーダーがおかしいことに気がついたということだ。この業者は代理店を通してオーダーする必要があった。逆に言えば、このノボジーンという会社はユーザーからの見かけ上、代理店と「癒着」しているように見え、だからこそ情報のやり取りはしっかりしていると思っていた。その根拠の一つとして、ノボジーンとのオンラインミーティングのときも代理店の人が同席して話をずっと聞いていて、サンプルの輸送方法の話なんかもしていた。これならもう、Ready to useだなって思う。しかし、見積書があまりにもアッサリしていたし、そもそも4サンプルって書いてある。確かに4サンプルではある…..

嫌な予感を感じつつノボジーンのサンプルシート作成に取り掛かると、やはり、その予感が当たる。そのサンプルシートは「サンプル」ではなく、「ライブラリ」でカウントしている。何…..だと……..!

ライブラリとしては8だ….(8 = 4サンプルx (3′ Gex + 3′ Feature Barcodeライブラリ))

この不一致について問いただすため、早速ノボジーンの担当者様シニアアカウントマネージャーH氏に苦情を入れる。どうなってるんだと。そして、恐ろしいことに、それから遅れる事2日目、以下のような回答を得る。本当に最悪だった。

「見積は4サンプルで作成しました。」

あの野郎、あれだけFeature BarcodeでCITE-seqやる、で、それぞれのライブラリを10xGenomicsのマニュアル通りのリード数で読みてえっつってんのに、Feature Barcodeではなく、通常のシングルセルRNAシークエンスのセッティングで、かつ、出力をバルクRNAシークエンスのFastqを返すっていう仕様で見積書を作ってきて、最悪なことに実験的にもその仕様でイケると思っていたらしい。もし、実験的にもっていうところは、つまり、その仕様書をシンガポールのテクニシャンに何の特記事項もなく渡し、そしてシンガポールでFeature Barcodeなんてなかったものとしてシークエンスされてしまうということだ。代理店経由でもらった正式な見積書は、めちゃくちゃアッサリ書いてあるのでそれを知り得ない。また、ノボジーンから直接もらった仮の仕様書には、当然、通常のシングルセルRNAシークエンスの事が書かれているが、それはFeature Barcodeを使ったCITE-seqは、実際のシークエンスの前にGEXとFeature Barcodeのライブラリを4:1で混ぜたり、混ぜなかったり、業者に依って異なるためだと思っていた。この企業を信頼していたため、そのあたりはこちらの要求(オンラインでのミーティングで散々伝えた内容)を満たしてくれるものだと思っていた。これは、少なくともFeature Barcoding(ハッシュタグ抗体)を使ったCITE-seqを理解しておらず、それ故にオンラインミーティングによる自分のスライドや話も頭に入れていなかったということだろう。何とかの一つ覚えみたいに、というか、ミーティングの内容をすっかり無視した内容でその仕様にOKを出したということが全く理解できない。何か違うとか、多少なりとも思わなかったのだろうか。思わなかったのだろう。

そもそも、ノボジーンのシークエンスのサンプルシートは、2023年2月13日の週の時点で、バルクRNAシークエンス用の物しか用意されていなかった。おそらく、そんなんなんで、X鹿なノボジーンのシニアアカウントマネージャーH氏は、単にサンプル数とリード数だけをこちらの要望に合わせたバルクRNAシークエンスの仕様書を出してきたんだろう。言うても、不備多すぎで分かり難すぎるノボジーンのサンプルシートのお陰で、シニアアカウントマネージャーH氏の残念すぎる脳味噌に気づくことができたっていうことは、ある意味感謝かもしれない。合計150万円の費用と、4ヶ月以上の準備期間を、少なくとも発注段階での最悪な失敗から救うことができたんだから。

ノボジーンのサンプルシートの最悪なところは、実際にTruseqでライブラリを調整し、かつ、イルミナのシークエンサーを自分で使ったことがある人間にしかわからない(分かり難い)ところだと思う。考えて見てほしい。なぜ、RNAシークエンスのライブラリ調整や、シークエンスを外注しているのだろうか。特に、インデックスの配列や読む方向までをそういうカスタマーに書かすのは、不親切極まりないと思うが。それに極めつけは、サンプルシートの下に「もしインデックス配列の情報に誤りがあった場合は、賠償責任を負ってもらう。」と書いてあることだ。もう、コンピューターの前で両手で中指だよなぁ、H氏。

そして最終的に頼んだ業者

アゼンタである。昨今のニュースを見ていると、不安にさせてくれる国の企業であるが、上述の通り技術については何の問題もない。さらに、ノボジーンが2週間も仕事をサボっているうちに、事細かに色々と教えてくれた。価格も安いし、今では品川にラボもある。まだどうなるかわからないが、この時期にも関わらず納期も比較的早い。今のところ文句はない。やっぱり強いと思う。

知識や経験のない野郎を見分ける方法

ここで、昨年末と今回で、使えるヤツと使えないヤツをざっくりと見分ける方法に気がついた。残念ながら、シングルセルRNAシークエンスは日本ではまだまだ普及していないし、他の国がどんどんシングルセルRNAシークエンスをやっており、もはや一般的な技術になる一方で、今後も一向に普及しない可能性もある。この状況では、それを専門に売っている業者の人間であるにも関わらず、全く知らない、経験を積むことができないという状況も考えられる。

そして想像なのだが、こういった企業や職の人間で、外回りで営業している野郎は、そもそも優秀でない可能性がある。そして、こういった普通よりも複雑な解析を成功させるには、こういった知識や経験のないカスタマーにとって迷惑でしかない野郎、ボノジーンのシニアアカウントマネージャーH氏やiLacのI氏のような野郎を、そいつが無能で使えない野郎であると見抜き、多大なロスから身を守る必要がある。そのためには、実際のシークエンスで必要な情報について答えさせるような質問をしてみて、その反応を見たほうが良い。それで、その質問に対する一般的な回答や、その会社で行っているような作業や解析方法について納得できる答えが帰ってこない場合は、容赦なく「こいつは無知で迷惑で会社でも仕事できていないからこんなところに影響に来ている野郎だ」とみなして良い。RNAシークエンスでのQCやDEG解析であるような「疑わしきは罰する」「こいつなんか居らんだっても解析はできるし有意差は出る」を適用した方がよい。個人的にはシングルセルRNAシークエンスでは、以下のことを聞いてやったらよい。

こちらの要求に関する具体的な技術を相手に答えさせる

まるでこっちが面接官の如く以下を聞いてみる。

「実は今度、10xの3′ GEXと3′ Feature Barcodeライブラリキットを使って調整したライブラリのシークエンスをどこかの業者に発注したいと思っているんだけど、よくわからないんだけども、XXXさんのところではdemultiplexして各サンプルごとにI1、I2、R1、R2.fastqを出せますか?」

なぜかと言うと、このときに話をした人間が、その解析の担当者になる可能性が非常に高いためだ。ウチらみたいなカスタマーがそんなこと知る由もないのだが、いままでの経験上、そうだった。正直言って、特に、後ろのfastqの出力に関しては会社から見たら実質の商品みたいなものなので、そんな基礎的かつ重要なことを知らん野郎に自分の実験で最も重要なところを任すことはできない。実際に、これを知らなかったら、どうやって技術の者に正確に情報を伝えるのだろうか。そんな状態では、正確な解析だけでなく、仕様書や見積書の作成だって無理である。

ミーティングでの会話がスムーズかどうか

こういった複雑かつ高額な依頼には、オンラインのミーティングを行うことも多いと思う。そこには技術の者も同席することも多いと思うが、その時の会話も参考になる。特に、レスポンスがなかったり、技術の者に「どうですかSさん?」とかしか聞かなかったりしたら要注意だと思う。自分の体験上では、前者はiLacの役員様I氏、後者はノボジーンのシニアアカウントマネージャー様H氏である。I氏が担当したシークエンスは、bcl2fastqもしくはcell ranger mkfastqを正確に使えなかったため出力に失敗し、今回のケースであるH氏は、シークエンス自体の失敗未遂である。他のKOTAIバイオ、かずさ、アゼンタはコミニュケーションが取れていた。

メールのレスポンスが遅すぎる

シングルセルRNAシークエンスは現時点では非常に高額である。それに加えて技術も複雑であり、上述のようにシークエンスのオーダーだって知識と経験が必要である。なので、当然サポートが必要である。なのに、ノボジーンのシニアアカウントマネージャー様H氏は単純な質問に2日、さらにFeature Barcodeライブラリのシークエンスの確認に2週間かかった。おかしい。ナメているのか??これらの内容はオンラインのミーティングで話た内容であり、さらにオンラインのミーティングを依頼するために自分たちのシークエンスの内容をメールしている。なので、この受注についての簡単な質問ならばすぐに帰ってきても良いはずである。なのに、こんなに時間がかかるのは何故だろうか。考えられることとしては、話した内容を全部忘れている・全然理解していないのに話を進めていた・色々と天秤にかけた結果こっちをナメているといったところだろう。それ以前に、この野郎の能力が全く足りていないということもあり得る。今回のノボジーンの件では、少なくともそうだっただろう。本当に、冗談じゃない。

もう、なんでああいう奴らが働いているのだろうか。価値ねぇんだからなんとかしてくれよ。迷惑なんだよ。

日本企業や日本政府の科学技術に未来はないかもしれない

業者を選んでいるとき、本気でこう思った。なぜかと言うと、KOTAIバイオやiLACなど国立大学発のベンチャーの圧倒的競争力の無さを痛感してしまったためだ。アゼンタやノボジーンに比べて圧倒的に価格が高く、それでいてリード数を稼ぐことができない。だれがこういった小さな業者を選ぶのだろうか。かずさは非常に良かったが、上述したとおりシークエンサーが小さく、リード長を稼げていない。個人的には非常に良い印象だったが、場合に依っては前述のように研究目的に合わず、業者として選んでもらえないのではないだろうか。そしてそういった企業は、いつ最先端の装置を導入できるのだろうか。アメリカや中国で一通り手をつけられた後だろうか。でもその場合はもはや次の世代の装置が出てきており、そんな時代遅れな装置を同じような額を出して好んで使う者はいるのだろうか。そんなの、いるわけがない。居たらそういう人はおそらくヌルい仕事をしているだけになるだろう。見ていると特に国立の施設が掲げている看板や文言と、実際の振る舞いや結果が一致していないように思う。企業したとしても、ゴミのようなサービスを撒き散らしていたら、それは単に迷惑でしかない。日本でのCyTOFを持っている施設の数の少なさ、誰もCYTEC AURORAの良さに気づいていないところ、バカみたいにPlos OneやScientific Reports風情で大げさにプレス発表をやるところなんかも、その表れなのかもしれない。つくづく情けない。

そしてこれが10年後にはどうなるだろうか。次はどの国に科学技術で置いていかれるのだろうか。最近は科学技術の応用が加速しているので、5年後には最新技術は一般的になること、日本の進捗の遅さを考えると、10年と言わず廃れるのは5年で十分であろう。井の中の蛙も大概にしないといけない。物品の価格だってそうである。一体アメリカの何倍の額を取られているのだろう。物品が手元に届くのだって、アメリカが3日で届くものが日本は2から3週間かかる。日本はすべてにおいてレベルが低い。今の日本は1970年代のアメリカにだって勝てるかわからない。そして日本が今更目覚めたところで、すでに後の祭りである。何をしても競争には勝てず、田舎者のダサい負け方をして、田舎者同士が傷をナメあって滅びを待つだけである。