どうかと思うグラント申請

日付;2021/03/18(木)

今日、ボスから、次のグラントに自分のRNA-seqの解析結果を載せたいから、だれが見てもわかりやすいようにヒートマップを作ってくれ、という依頼(課題)が出た。特に難しいわけではないのでメールで「いいよ。やってみます。」と言ったのだが、その後ボスが来て、ものすごくガッカリすることを言ってきた。

考えるのも馬鹿らしく、もはや現代の医学・生物学研究者とは思えないことを言ってきた。本当に馬鹿らしく、しかしながら、反面教師的な側面もあるので、ここに記しておこうと思う。以下に、大まかな会話の流れを述べる。

  • ボス「どのデータがXXXX細胞が減っているを示しているのか。」
  • 自分「GSEA解析の結果です。」
  • ボス「そのデータは100%間違いなくXXXX細胞が減っているということを示しているのか?」
  • 自分「いいえ。それを示すのは難しいです。RNA-seq解析のLimitationだと思います。それは実際にフローサイトメーターで解析するべきだと思います。」
  • ボス「それは今計画しているだろ。わかりやすく、ヒートマップを書いてほしいんだが。」
  • 自分「もちろん、いいですよ。ここに有意差があった遺伝子リストがありますので、それで書きましょう。でも、これは有意差があった遺伝子なので、完全に赤と青に別れますよ。」
  • ボス「それで良い。で、どれがXXXX細胞を特異的に示す遺伝子なんだ?」
  • 自分「これは有意差があった遺伝子なので、この段階ではまだエンリッチメントやアノテーションの解析をしていません。同僚の結果のようなヒートマップは、これをヒートマップにしたものです。RNA-seqの結果をつかって、差がありそうな遺伝子群をリファレンスの遺伝子群と比べてみて、どの程度一致してそうか示したのがGSEAの結果です。それがGSEAです。これらは Genesetとか、gene signatureとかで推定するので、100%間違いなく、XXXX細胞であることを示すは難しいのではないですか?もちろん、ヒートマップは作れます。でも結局、それをやったのがGOのアノテーションだったり、GSEAだったりPathway解析だと思いますが。」
  • ボス「それは(GSEAやGO annotationは)違う。わかりにくい。ヒートマップがほしい。」

以降、同じ質問の繰り返し。

  • ボス「お前の解析が信用できない。Bioinfomaticianに頼んだらどうか。」
  • 自分「そうですか。それでは、そうしてください。」

さすがに「信頼できない。」という内容を聞いたときから、もはや協力する気が失せてしまった。RNA-seqの解析に限らず、こういった網羅的な解析を全く理解していない。信頼性を担保するのは肩書か?自分の見る限り、3群の解析にDEseq2をいちいち繰り返すような、FDR補正されていない、p値を出してくるbioinformaticianのほうがよっぽど信頼できないが。最後に、「締切が月曜日なんだ。」と言ってきた。明日、しっかり実験があるからこんな無駄な解析に時間を使うことはできない。もう一度言うが、ガッカリに加えてあまりにも無駄に思えてしまい、時間を使う気にならなかった。なので、今手元にあるデータ(GSEAの結果で出力されるヒートマップ)をFDR補正後のp値とともにメールで送りつけてやった。なんと作業時間3分くらいだった。これはまたグラント落ちるな。というか、信頼していないのなら、協力する必要もない。

次の日3月19日(金)のミーティング前、そのヒートマップで良かったらしいことがわかった。ただし、「YYYYが発表したXXXXX細胞のプロファイルとちがったけどね。」みたいなことをまだ言っていた。一致なんかするわけない。これはscRNA-seqとか、そういうのではない。解析してほしかったら、そして、そんなに言うなら、その論文をみせてみろ。話にならん。もう勝手にしてくれ。だからグラント落ちるんだよ。バレてんだよレビューアーに。