グラントに落ちたらしい

自分が所属するラボでは、毎週金曜日にラボミーティングがある。そこで、その週、もしくは2週間毎に得られた結果について議論する。そして今日、グラントが落ちた(すでに落ちていた?詳しくは知らん)ということをカミングアウトされた。どうやら、自分が今やっている研究に関するR1(って言ってた気がする)が駄目だったらしく、その理由は「論文になっていないから、その結果は全部ウソだ。」ということだったらしい。なかなかストレートでわかりやすい理由であり、はっきり言って、それに対し取り立てて異論はないし、「そうですかぁ。なんてレフェリーなんでしょうね。公平じゃなさそうですね」とか、そういうふうにへつらうつもりも一切ない。

今、あるジャーナルの2回目の改定を行っている最中である。ボスは「この論文は本当は3ヶ月前に通っているはずだった。言っておくが、私はお前にキレているのではない。こんな実験をさせるレビューアーにキレている。」だそうだ。いやいや、どう考えても、キレてるやんか。俺に。まぁ、知らんけどな。

レビューアー3以外はOK。でも、このレビューアー3はちょっとどうかと思う。詳細は述べないが不要な実験を要求してきている。一般的にこういったおかしなレビューアーには「それはおかしい理屈だ」と反論しないと、お金と時間の無駄になってしまう。でもうちのボス(たち)はリジェクトされたくないからという理由でその要求を受け入れている。自分は未だに反論したほうが良いと思っている。だって本来関係ねぇ実験だから。それやっても何も発展しないからね。ただの蛇足。

実際にそのコメントをみたわけでなないので確かではないが、「論文になっていないから、その結果は全部ウソだ。」とのコメント1つだけだったらしい。ということは、グラントを通すには、どうやらその研究が論文になっていることが第一条件らしい。これは科研の若手Bとかでも同様(過去の同僚とかを見ていると、その限りではなさそうだが。)だと思う。以前所属していた研究所のボスにもそれを言われたことがある。つくづく、どの国でも似たような感じだと思う。ただし、自分が言いたいことは、論文になっているからと言って、その研究が100%本当とは限らないということだ。アメリカは研究資金や研究体制のレベルが日本とは比べ物にならないほど高いが、研究者自身の平均的能力は決して高くないように思えるし、それ以前にそもそも捏造するラボは根っから捏造体質である。レフェリーもそのことを踏まえて、ちゃんとデータや提案を吟味して、その研究を採択なり落選させてほしいものだ。特に申請書やグラントアプリケーションの半分はこれから行う研究計画書なので、良さげなことを書きたい放題であり、ロジックさえ通っていればそれでOKに見える。提案なので多少誇張やウソが混じっていても、それを判断するのが難しい。自分がこのラボに来たときに、今後自分が行う研究の申請書を読んだが、後になって書いてあることがことごとく実現できなかった。それに、それを不満に思うボスと戦うことができないヤツ、口論で折れるヤツは100%に近い確率で捏造するので、もはや出版されており、レビューを通過しているからウソではない、という理屈は全く通らない。

そういうことで、これは自分の悪いところなのかもしれないが、この留学に関しては、別にボスのR1が落ちようが、この研究を世に出すことができれば、そして、勝手なようだが自分の雇用が続けばそれで良いと思っている。自分については、研究の核になる部分を、自分の責任でしっかりやればそれでいい。だから、その周りにあることに対して何を言われても大して気にならない。ただただデータと正直に向き合い、有意差がなければ、おかしな希望的考察なんかせずに「No matter what you are saying, this is what it is. There is no statistical significance.」だ。言い換えれば、ボスに対しておかしな迎合をすることでおかしなデータを示して、それが後に悪影響を及ぼしたり、公正でなくなるのなら、ハッキリとNoと言ってやってる。ちょっといろいろあって、自分はこれはしっかりやってる。だから、もはやボスとのバトルにも慣れたものだ。ただ、ラボメンバーはうんざりしいるだろう。いつも喧嘩みたいになる。不安にならずとも、論文の前はみんなそうなる。それがでいないと、捏造する。そうまでして大きなグラントを取って、最終的に捏造だの何だのという問題がおこるなら、そんな研究計画やラボへの研究グラントはいらない。もちろん、レフェリーに「おかしい」とバレた可能性だってある。だから、たった一つのコメントにより落とされているのかもしれない。なぜこう思うかというと、実際、そういうことが過去約3.5年の間、自分の知っているだけで2件あったからだ。

それよりも、助成金に落ちてどう、とか、論文のレフェリーがどうとか言うよりも、開始予定時間に遅れてくることのほうがよっぽど腹立つ。こっちは遅れないようにいつもより早めにきて、ちゃんと準備してるんだからな。遅れてきた5から10分を返してほしい。この時間でコーヒーくらい飲めるぞ。