ポスドクがすぐ辞める研究室の特徴

日付;2021/04/17(土)
改定;2022/02/22(火)

ここでは、これまでの自分の研究キャリアを通して、どんな研究室がダメなのか自分が感じた(感じている)ことを、その様子と、その様子が反映される結果について書いておこうと思う。これは今後自分が所属することになるだろうアカデミックな、もしくはそれに類似したポストの将来を考える上で有用だと思う。まずは研究とは一体どんな行為なのかを述べ、次に、解りやすい順に研究のやりにくい研究室の特徴を述べる。

研究とは?

研究する目的なんてのは所属する研究室、分野、社会によって異なるといえる。しかし、どんな目的があったとしても、やっぱり最終的に評価されるためには業績ってのが必要で、それがなければ存在意義が無いと思う。アカデミックな研究室で必要なのは、結局のところサイエンスであると考えている。最近では「大学も自分で稼げ」的な風潮もあるが、そんなことは企業に勝てるはずもなく、そして、それがやりたければ起業するしかない。そしてそんなことを許したら、優秀な研究室はたちまちアカデミックから撤退し、そしてより大きな企業に買収されて終わり(もちろん、それが目的というスタイルもあるだろうが、その場合研究室は終了するだろう。)である。ということで、大学ってのは、そういった金儲けではなく、サイエンス(金にならないけど、世の中の発展に貢献できるようなことの基礎を築く)をやらなくてはならない。そして、そういったことの成果が論文であると思う。それを第一歩にして、学会やその他のミーティングなどで企業へアプローチして、社会の発展に貢献する、という流れになると思う。そういうことで、ここでは、良いサイエンス(もしくは研究)が「できない」、良い論文が「出せない」だろう研究室の特徴を、主観的にではあるが記していこうと思う。

これまで研究をしていてダメだなぁと感じたこと

  • 長いこと研究やっているように見えるが、論文の数があまりなく、それでいて論文のインパクトがイマイチ。
  • グラントのために、今まで見たこともない試薬を買い、それを使って、自分で実験している。
  • 学生がいない(来ない)。
  • 自分が知っている限り、理由がどうあれ1年で5人(ポスドク3人、Research Associate2人、その内1人はクビ)辞めている。
  • もしかしてアタマ悪い?
  • 迎合が酷い。

研究室が汚い

実験では様々な機器を使用する。逆にいえば、そういった機器や道具がなければ、研究なんてできない。もちろん、これには実験机(ベンチ)や試薬棚なども含まれる。もしそれらが整然としていない研究室は、その研究室の業績にも何らかの問題があると思う。それは当然、ちゃんとした道具がなれば、ちゃんとした結果なんて到底得られないためだ。例えば、ウェスタブロットのタンクとブロッターや電子天秤がそうだ。ある研究室のPIは、他の仕事はどうなってんだ?と思うくらい実験する。そしてそのPIは実験機器の整理整頓が全くできていないように見える。使いっぱなしにするわ、しまう場所は何時もバラバラだったりするわ、しまった場所を忘れるわ、試薬が電子天秤に散らばっているときがあるわ。そしてそれに付随するように、物品の管理が総じて下手に見える。発注の権限を他人に与えておらず、かといって自分からリストアップされた物品の発注することはなかなかない。こんな状況ならば、必要なときに必要なデータは得ることはできない。こういうところは、目的を達成するための近道を歩くことをできない研究室ではないかと思う。見ていてそう思う。

これまで見た中で最も汚い研究室。

学生がいない

これは次に述べる辞める人が多いということとも関することだと思う。個人的に観察していて思うことは、PIの性格の悪さが、SNSなどの学生間のコミュニティーで筒抜け状態になっているのだと思う。これはどうも学生間ではとどまらず、同僚間でも情報が伝わっているのではないか、と思うシチュエーションがあった。例えば、学生が見学に来たが、その後のPIに対する質問が不思議なくらいアグレッシブだった(これはもしかしたら自分にも責任があるかもしれない。忙しかったので、めちゃくちゃ適当な挨拶になってしまった…でもその後に来た学生には、その反省としてそれはそれは誠実に対応したが、やっぱり来なかった。)、ポスドクが応募してきたが、どうもオンライン面談直前に同じ大学内の他の研究室に移った(これはこのポスドクが、ニューヨークに来たかっただけの可能性もある。そしてそれを見抜けない能力とも言える。)、知っているひとが「あの先生ねぇ…」と言っていた、等があった。そういった研究室には人が集まらないだろう。来てもそいつらは売れ残りの使えないヤツで、つまりは研究室も売れ残りである可能性だってある。大学なのに学生がいないってのは、特に書く必要もなくヤバいことである。研究について言えば、研究の担い手が減るので、やっぱり良くない。学生だって立派な研究の担い手で、優秀であれば良い結果を残してくれる。そしてもう一つ言えるのが、学生たちを管理する能力が無いとも言える。そんなのがPIならば、もう息は長くないだろうと思う。こういうのを「学生の空洞化」と言うらしい。

仕事を辞める人が多い

上述した学生の空洞化と同じメカニズムだと思う。要は、一緒に仕事をしたくないと思う人が多いということだ。面談などを経て、自分でその研究室を選んで就職していることから、これはPIの性格やその研究室の性質に起因することかもしれない。自分が、これはダメだと思ったPIの特徴、もしくはこれが辞める原因かなぁと思ったことの一つは、PIが人を信頼しないことだ。これは実行権限(物品管理)を他人にほとんど与えないということにも現れていると思う。それでは、おそらくそのPIも誰からも信頼もされないだろうと思う。さらに、結果を全く褒めない。これ自体は自分もそうなのでなんとも言えないが、褒めないだけでなく、まるでDisrespectされているように感じることがある。これは精神的にかなり堪える。それに加えて、実験に失敗すると、まるで謝罪をしないといけないような感じになっていた。まず、ここ3年くらいの間では、5人中2人は明らかに追いやられていた。傍から見ていても、理不尽かつかなり可愛そうだった。来て3ヶ月で辞めたポスドクなんて、「PIはわたしのことが嫌いだ。」と言って辞めていった。いちばん酷かったのは、そのポスドクが質問に対する応答ができなかった日の夕方、そのポスドクのデスクを勝手にアサって実験ノートを開き、その結果や実験手技をチェックしていたときだった。これはPIの権限の範疇かもしれないが、やはりそのときの態度で違うように見えてしまう。それに、あんなにプレッシャーをかけられたら、誰だってまともに返答することはできない。自分も同じ事をやられたことがあるが、ハッキリ言って全く良い気分ではないし、いくら権限があるからと言ってもやはり人格を疑ってしまう。別の面では会話での問題がある。研究の話はするが、実際は研究の話ではなく、ボスの考え当てクイズ、みたいになってしまっている。答えが外れたらDisrespect。その割に自分には甘い(他人にだけめちゃくちゃ厳しい)というときがある。「ちょっと待て。お前それやったら、うちらにどう言うよ?」という感じのことを平気でやったりする。こっちはタダでさえPIの人格を疑ってきているときなのに、それをやられたら、本当にキレる。それに、実験中の振る舞いなどもかなり自分勝手に見える。通常の会話でも、仕草や応答など、不愉快に思うことが多い。最近では、どうやらこういうのがかなりマズいということが理解してきたようであり、少し前に比べて改善はされているように思う(自分が慣れただけかもしれない)。余談になるが、おそらく、1人をクビにしたときにその人から大なり小なり訴えられていると思う。その理由は、そのときにクビにした人と一緒にマネージャーに呼ばれていったためだ。これがどういう意味なのかよくわからないが、それ以降、この人の態度がかなり変わったように見える。その時点でもうダメである。

教授・准教授が実験にかなりの時間を費やしている

教授、准教授の仕事は、もはや研究室のマネージメント(広報活動やグラント取得を含む)であると思う。それなのに、一日の仕事の半分を実験に費やしている。これは言ってみれば、実験が主な仕事であるポスドク、課題で実験しなくては行けない学生にとってみれば、邪魔でしかない。その理由は、そういうヤツに実験機材や空間を専有され、自分のメインの仕事を後回しにする必要があるからだ。それに、自分でも反省点として記憶しているが、そんなダルいボスが傍にいたらリラックスできず、パフォーマンスが落ちまくる。いろんな意味で邪魔である。もちろん、邪魔でないボスも居る。そういう人は人間としてもとても良かった。さらに、上述の通り、ボスの片付けが悪かったりすると、最悪である。また、そんなことをやったら本業であるマネージメントが落ちまくる。こんな研究室は、運営が徐々に悪化していく。特に目に見えて顕著なのが勤務時間の延長で、将来的にはグラントを取れない、とかになる。これは当然で、一日の半分しかやるべき仕事(広報活動・マネージメント・グラント取得)をやっていないためだ。おそらく、優秀な学生やポスドクにいろいろな実験をやらせて、その結果をもとに研究を発展させたり、グラントを取ったりするべきだろう。そっちの方が同じ分だけ働いて、たくさんの業績がでそうだ。実際、PIは責任著者になるはずで、これはもはや第一著者よりも良いオーサーシップである。ポスドクや学生の研究業績は、自分のものといっても過言ではない。それが下手な研究室(もしくはPI)と上手な研究室(もしくはPI)では勤務時間にも業績にも雲泥の差がつくだろう。そいう意味でも人員の空洞化は致命傷になりうる。

ほしい結果を出そうとする

ミーティングでの他の人の進捗状況の発表で、PIが「この結果が出ないのはおかしい。なぜこの結果がでなかったのか。」とか、「その結果を得るためにはこの実験でこうすれば良いはず。」と言っているのを何度も聞いた。しかもそれは、「その論文にその結果が必要だから」だ。当然、PIは良い結果が欲しいので、そういうことを言うと思う(と、以前の職場の元ボスに言われたことがある)。でも考えてみれば、これはものすごくヤバいことである。これは限りなくResearch misconduct、もしくは最悪の場合、捏造に近い。例えば、ある薬剤Xで処理するとタンパク質Aの発現が亢進するという結果があるとする。そのタンパク質Aはアポトーシスの促進因子とする。そのタンパク質Aの発現をノックダウンした上である薬剤Xを投与するとアポトーシスが抑制されるという仮説を立てて実験したが、対照群と比較して有意な変化がないという結果が得られたとする。もしアポトーシスが抑制されれば、論文としてキレイに完結する、という状況だ。そこで、ミーティングでは、「じゃあこれをこうすればこの状況でアポトーシスが抑制されるはず。」とか、挙句の果てに、「なあ、これを対照群にして計算するとアポトーシスが減るのだが、これでいいか?」とか聞いてきたりする。自分はそれは完全なアウトと考えている。経験上、これをやってしまったらサイエンスではなくなる。研究手法が正当な場合、理想的な結果でなくてもそれをちゃんと考察すれば、どこか別の結論に正しく着地できるはずである。また、それをやってしまうPIは、おそらく勉強不足か、経験不足か、思考停止の状態になっている。経験的には、日米問わず、肩書にMD, Ph.Dと書いてあるPIに多いように思う。本当にあのMDというヤツは研究に関しては酷いと思う。

「その論文にその結果が必要なので、その結果を出すためにその実験を行う。」というのは、仮説を立てる順番が逆である。正しくは「その結果はこの現象を示すかもしれないので、その実験をやってその仮説を確かめた。」である。そして、出た結果は、それが理想的でなくても、客観的に見てそうなった理由を考えないといけない。サイエンスで言えば、これほど不快なことはないと思う。もしキャリアに余裕があるなら、自分で納得できるそこそこの成果を出した時点でその研究室は去った方が身のためだと思う。捏造への第一歩だし、最終的に再現性が得られなくなる。例えば、「彼が以前使っていた細胞Mだと発現が抑制されるが、研究室で共通で使っている細胞Mで同じ実験をしても、抑制されないのだが….」となる。または、「ちょっと待て。これって割り算じゃないの?なんで引き算してんの?おかしくない??」とかだ。マジで最悪だ。こんなもの、ある種のResearch misconductである。

研究室以外のことプライベートであっても絶対に許さない

これもなかなか難しいところだが、自分のキャリアのことを考えるならば、やっぱり色々なところとコネクションを持ったほうが良いし、いろいろなところに顔を出しておくということが必要である。これを許してくれず、そしてその研究室の研究がどうしてもゴミのような内容だったならば、どうしたら良いのだろうか。こうならないためにも、はじめからPlan B的なことにも手を出しておくのが懸命だと思う。

ここで最悪なのは、休日や勤務時間がとっくに過ぎた時間にも、要は「やるな」ということを半ば強制される場合だ。例えば、新しくポスドクで研究室に入ってきたばかりのときなどは、以前の研究室のテーマで論文を書いているかもしれない。それを休日を使って書いていることも許さない人が中にはいる。2019年になるが、休日に研究室に行って、これまで行ってきた研究のレビュー論文を書いているとき、PIと会ってしまって、当然それも見られたんだが、そのときにまるでインタビューみたいに細かいところまで答えさせられたことがあった。次項で述べるが、このPIがの業績は、残念ながらそんなに秀でていない。そんなヤツに休日までグダグダと言われたくない。まぁ、休日を休めないヤツに、ロクなヤツはいないということだろう。こういう研究室では、最終的に自分のキャリアを考えることもできない、という状況になりかねない。さらに、最悪だったことは(自分ではないのだが)、どうやらそういうPIは、就活の際のリファレンスになることも、そのPIにとって無駄とみなすことがあるようだ。その話を聞いたときには、他人のことなのに本当にアタマに来て、その人の人格を疑ってしまった。どれだけ人を信頼してこなかったのだろうか。どれだけ今まで人に信用されたことないんだろうか。人付き合いが下手なのにも程がある。潰れるならば1人で潰れてほしいものだ。

研究室の研究の全容がつかみにくい

例えば、ある日ディスカッションをしていて、PIの能力に疑問を持ち、ちょっと業績を調べてみようとする。Pubmedで検索しても、その人が第一著者もしくは責任著者の論文がなかなか見つからない。見つかったとしても、なんか現在のテーマに関する論文が、Cancer Research1本、Plos One2本くらいしかない。就職のレターを出して良い返事をもらったので、Googleで検索してもその人が何をやっているのか、よくわからない。つまり、そのPIって、PIなのにあまり良い論文を出していなかったりする。これはアメリカでの話だが、そんな研究室は高い確率で最新の研究・インパクトのある研究をしていない・できていない可能性がある。もちろん、そこは新しい研究室で、業績がないのかもしれない。しかし、その場合でも、その人には別の業績があるはずなので、それがあまりパッとしないならば、その研究室は要注意だろうと思う。そのPIはおそらくハイインパクトな論文を出した経験もないし、そんな研究を率いた研究もないことになり、かなりレベルの低い研究をやってしまう可能性がある。

もしその研究室のPIが、これまで得られている研究結果となんの繋がりもない研究テーマ、例えば「免疫チェックポイント阻害剤との併用がやりたい!」とか、その薬剤がマウスの免疫を抑制してしまう可能性があるにも関わらず、「 Tumor infiltrate leukocyteがやりたい!」という旨の、結果を鑑みるとうまく行かないようなことを突然言ってきた場合、その研究室の研究は迷走を始めているのかもしれない。自分的にはそう思っている。それ、そもそも最先端じゃあねぇけどな。

ホームページがない

ホームページは、良い情報発信手段であると思う。なんとかしてその成果を外に広めよう、とか、良い学生に来てもらうためにわかりやすく説明しておこう、とか、そういう用途にはとても良い。そして、自分の研究室のホームページで情報を発信しようとすると、ある意味では自分以外も含む組織の情報を発信することになるので、情報発信に責任が伴ってくる。良い情報は、やはり責任があって良いページから得られるように思う(これはGoogleの考えとも一致している。)。このご時世、そういったツールをしっかり使えていない研究室はどうだろうか。究極には、怪しい研究室にならないだろうか。それに、逆に言えば、なにかやましい事でもあるから情報を発信できないのだろうか。信頼のある情報を発信することで、他の組織とのコラボレーションもやりやすくなるのではないか。これをやっていない研究室は潰れる、とは限らないが、少なくとも何か損している気がする。そして、もしそういったスキルがないのであれば、時代錯誤な気がする。今はこういったスキルもマネージメントスキルに加えても良いようなもんだ。だいたい、ホームページがあるのとないのでは、情報収集の効率がまるで違う。コミュニケーションの助けになるが、なかったら話が全く進まないことだってある。ホームページに業績や研究テーマがない研究室は、どこか責任感がないように思う。

フロアのマネージメントが悪い

これはもはや研究室単位ではないが、大学とかに多いのではないかと思う。まず、アメリカの大学やおそらく研究施設では、フロアマネージャーみたいな人が存在しており、この人が、例えば共有機器部屋へのアクセスを許可してくれたり、部署で管理している設備、例えば液体窒素などを管理していたりする。そして、このフロアマネージャーが無能だと、とんでもないことが起こる。まず、他の部門や他のフロアから、全く関係ない学生や無能なポスドクが来て、フローサイトメーターやプレートリーダーを使う。そして、かなりの高確率で壊す。なぜ壊すかというと、登録されていないので壊してもよくわからないためだ。まずはこれが起こる。そして、無能なフロアマネージャーなので、それをメールしても対応もしなければ一向に返信もない。こんなことが頻繁に起こっていると、明らかに研究の進捗に支障が出る。この問題のタチの悪いところは、傍からパッと見ただけではわからないことである。本当にたちが悪い。では逆に、本当に優秀な研究室、例えば、国で運営されており、国際的な共同研究をたくさん行っているような研究室ではどうしているかというと、これでもかというくらいしっかりマネージメントされている。小さい大学だから、それはできない、とかそんなことはない。それはフロアマネージャーやそのフロア全員が、無能なだけである。そしてもしその大学に、しっかりとマネージメントしている別の部署があれば、それは明らかにフロアやその部門が無能であるという証拠と思う。この問題は研究室や個人の問題ではなく、フロアや部門の問題であるので、これらの問題を避けるためには個人で気をつけるしかない。ということは、これが起こっていて改善されない場合は、その個々の能力も、フロアの能力に比例して低いということに繋がり得る。一緒になってはいけない。無能になってしまう。

ボスの能力が低い

これは傍からパッと見ただけでは全くわからない。しかし、この場合は研究室が潰れる可能性はかなり高いし、良い検体を持っていてもそれを全く使えていない、とか、潰れずとも大損失をしており、研究業績もかなり悪いと思う。自分はその研究室に見切りをつけて、結果を一通り論文にしたらすぐに辞めた。その1年後、PIは他大学に移動することになり、その研究室は潰れた。その経験により、PIの能力が研究室にどういう影響を与えるのかについて、確信を得た。

個人的には、研究室に入るときの面談時に既にボスの無能さが現れている場合があると思っている。研究者の面談ってのは、研究業績リストと研究発表を元に行われる場合がほとんどと思う。その研究発表のとき、発表の内容に対して全く質問がでなかったり、全く興味がない感じだった場合、そのボスの能力を疑った方がよい。発表が悪いという場合があるが、それはほとんど無いと思う。なぜかというと、これまで行ってきた研究内容について事前に提出してあるからだ。それに発表が下手だった場合だって、発表を理解するために何か質問するはずである。なんの質問も無いのはおかしい。したがって、そのPIは自分の専門とする分野と発表者の分野が少しでも違えば、その内容を理解できない可能性がある。もしくは研究の基礎がないのかもしれない。こういう人はやっぱり、主に病院に勤めている医者で、自分では研究もしていると思っている人に多い。それは研究のマネごとである。

また、これはなんとも言えないが、その研究室の紹介もしっかりしたものがない場合も、すこし注意するべきかもしれない。もしかしたら、ただただ働き手を探しているだけの場合がある。逆に言えば、学生や技術補助員のような働き方を求めている可能性がある。それはポスドクや研究員の仕事ではないし、そんなことをやったところで業績にならない。可能ならばすぐに次の就活に取り掛かった方が良い。

アメリカ(の小さい研究室)では准教授という人(発表が上手ならばなれる??能力にかなりのバラツキがある。アメリカの場合、論文の数もしくは質にその答えが現れている。業績がヘボければ高い確率で無能もしくは問題あり。)に、日本では医師(自分は研究ができると勘違いをしている人が多すぎる。医師と研究者は全く別のものである。実際は博士過程の学生以下。現状、日本の医学部の博士論文はどんなものか、知っている人ならば納得できるはず。めちゃくちゃヘボい論文のアブストラクトを提出すれば博士が取れてしまう。自分のThesisはない。下手すれば投稿中の論文のアブストラクトで博士が取れる大学もある。一方、理学部や工学部などの博士は、論文のアクセプトとその研究をまとめた100ページくらいの博士論文を提出しなければ取得できない。なんですかこの差は。)という人に多い気がする。

PIの能力がないという根拠を一概にどれと特定することは難しい。しかし、業績を得ている他の研究室との比較からその可能性が生じてくる場合もある。これはある意味、その研究室の生活習慣病というか、病気みたいなもので、もしその病理が上記に記してきたことなどで説明がつきそうならば、キリの良いところで別の仕事に移ったほうが自分のためだ。長くやっても良い業績を得ることができなかったり、疲れるだけだったりする。PIの能力は、研究室の状況や業績に関わるあらゆる側面に影響すると思う。

マジで気をつけようと思う。