ニューヨークで研究(生活)することの利点

日付;2022/02/15(火)

2017年10月から2022年3月までニューヨークでポスドクとして研究した。その経験を元に、研究活動を行うためのニューヨークの土地柄の良いところを記録する。


ニューヨークの利点

自分はNYCは日本よりも50年くらい社会の仕組みが進んでいるのはないかと思う。多人種かつ世界中の様々な人種や文化が集まっており、社会のシステムも最先端で如何せんスピードがある。もしかしたら、日本の将来はこういうことになっているのじゃあないかと思う。それをすこし掘り下げてみて、自分なり感じたことを記す。

英語は下手でも問題なし

アメリカで4年5ヶ月生活したが、正直に言えばあまり英語が上達していない気がする。それでも最後の方には十分にボスや同僚と必要なコミュニケーションはとれていた。

昨年、力試しとしてTOEICを受けようとしたが、コロナウイルスのパンデミックのおかげで全試験が中止になり、結局受けることができなかった。そんなんなのでTOEICの過去問を買って問題をとき、自己採点してみたが、75%は正解していたと思う。なぜこんなにざっくりとして点数かというと、TOEICの問題がバカバカし過ぎてちゃんとカウントする気にも慣れなかったためである。はっきり言ってあんなもんの勉強は時間の無駄であり、本当の英会話能力は全く計れないし、勉強したところで英語は上達しない。誰が「草原に椅子がおいてある!!」なんて英語を日常でしゃべるのだろうか。勉強の目的は英語の勉強ではなく、試験への慣れのためだろうと思う。なので、どんな試験でどんな流れなのか理解したら、”TOEIC”のための勉強は終了で、ほかの目的に時間を使うべきだと思う。

しかし、英語を話せない国No.1の日本社会はなぜかTOEICが大好きなので、日本に帰って機会があれば、改めて受けようと思う。あと、TOEFL。これは海外留学で必要であり、アメリカの大学やアカデミックで活動していけるのかどうなのかの指標なので、これもできれば定期的に試験を受けたいと思っている。

話は戻るが、英語について他の研究室やNYCを見渡していても、如何にに英語が下手な連中が多いことかわかる。全く英語なんか喋らなくてもいいようなシステムだってある。特にDMVやTax Returnなどでは、はっきりと英語ができる代理の者が申請できるようになっているし、スパニッシュと中国語の翻訳がそこら中にある。なぜか日本はないが。なので、ニューヨークに留学して研究するのであれば英語は下手でも良いと思う。もちろん、上手な方が絶対に良い。ビジネスするならそれでは駄目だろうが。むしろ必要なのは、目的意識とそれに基づいた根性である。これがないと、一発で心が折れる。

社会の最先端

物流(郵便や配達などすべて)、一般的な行政などの効率が日本より遥か効率的である。特に多くがオンライン申請であり、しかも通常の手続きで適切に処理されれば非常に早い。公共の交通機関(MTA; The Metropolitan Transportation Authority)だって基本的に24時間営業なので、最悪、深夜までだって働くことができる(その場合は明らかにセキュリティー問題が生じるが)。日本と違ってWiFiも街中に飛んでいるので、通信だって日本より優れていると思う。ゴミだってそう。分別はほとんど自分で行う必要がない(というか、無駄にやったら怒られそう)ので非常に楽だし、粗大ゴミもインターネットで申請しておけば後は指定した日時に所定の路肩に放置するだけである。あと、忘れてならないのが電気代である。昨今はConEdisonも徐々に値上げを始めているようだが、それにしたって電気代が日本より安い。

最も感心したことは、コロナウイルスパンデミックに対する対応である。日本なんかとは比べ物にならないくらいのマンパワーで動いていたし、しっかりと理屈に基づいて対策を立てていた。日本のニュースをYoutubeなどで見ていると、日本は他国を批判するだけで、冷やかし90%で意味のわからない報道をするだけだが、アメリカは基本的に理屈に従って、意思(志)をもって動く。今ではコロナウイルス対策については日本政府は先進国で最も失敗しているではないか。一方ニューヨークでは、英語もロクに話せない移民だの非移民だのがたくさん居るにも関わらず、コロナウイルスの流行に対処できている。このくらい市民をリードする能力がある。

研究についても、小さな領域に比較的多くの企業があり、さらにそれらはNYUやコロンビア大学が元だったりするので、優秀である。なので、研究もやり方によっては非常にはかどると思う。また、以下の述べるが、周辺にフィラデルフィアやボストンなどがあるので、物品なども非常に早く届く。

知名度だけは高い

ニューヨークと言えば知らないヒトはまず居ないだろう。説明が簡単である。セントラルパークは走るのには丁度いいし、5番街に行ったらみたことあるのがいっぱいある。一方、タダのお笑い留学にならないように研究業績はしっかりと積まなければならない。

2017/10/15のタイムズスクエア。

車が不要

MTAがバスと電車を24時間運営しているし、この2つを活用すればNYCで困ることはない。セキュリティー上の問題により深夜の移動が難しいならば、UBERを使えば一発である。深夜なんか、異常な速度でぶっ飛ばしてくれる。

MTAの掲示板。

働き手が多く、その結果としてマンパワーが高い

例えば、デリバリーなんかがそうである。ニューヨークはこの手の働き手がむちゃくちゃ多く、システムもこういう働き手のために最適化されているので、相当に早い。もしかしたら土地柄も影響している可能性がある。例えばボストンはニューヨークのすぐ上だし、フィラデルフィアだって電車で行ける。この結果として、研究物品を注文したら通常では1週間以内には手元に届く(バックオーダー以外)。日本であれば抗体を注文したら基本的に早くて2週間必要である。

日本食が簡単に手に入る

電車で少し行けば、日本食ショップがある。知っているだけで3つ(KatagiriSakurayaSunrise mart)ある。他の州ではこれはまずないだろう。行ったことがないけど、ニュージャージーには日本食のデカいスーパーだってあるらしい。慣れてくれば日本のものもそんなに難しくなく手に入る。アマゾンとかもあるし。あと、忘れていけないのが紀伊国屋。ブライアントパークの近く、6 th Ave.のところのホールフーズの隣にある。正直言えば日本の本なんかあまり必要ないが、文房具が良いかもしれない。

いつもお世話になってますSakura Yaさん。

美味しいレストランが多い

ニューヨークで生き残る料理店は基本的にすごく美味しい。なので、基本的に小綺麗な店ならばどこに入っても美味しい。それに、これはアメリカ中何処でもそうだと思うが、ウェイターたみんないいヤツである。その理由はチップ。サービスが良ければチップを貰えるので、それを狙ってサービスが良くなる。そして、もう一ついいところは、サービスが悪ければ堂々とチップを払わなくていいところである。忙しい店なんかでは、チップなんか払わず、必要な金だけ置いてとっとと帰るなんて頻繁にある(自分は。他人は知らん。)

Naruto Ramen。ここはいつもけっこう混んでいて、接客が悪いことがある。そんなときは、堂々と未チップで店を後にできる。

世界中の人種・食事が知ることができる

ニューヨークは世界中の人種が集まる州である。なので、世界中の人種を知ることができえる。行きつけ(だった)床屋のおっちゃんが「ニューヨークはアメリカじゃあねぇぜ….」的なことを言っていたが、それはあまりにも他人種かつ英語が必要ではないことを意味するのだと個人的には思っている。このために、世界中の食事も知ることができる(しかし、アメリカ人、インド人、中国人が独自の解釈でテキトウなアレンジをしている場合も非常に多い。)

寿司。大概間違っているが、旨けりゃそれでいい。

地震がない

ニューヨークのアパートや建物はほとんど古い。確か築100年とかがかたりたくさんある。そんな建物でも現役なものが多い。その理由の一つに、地震がないことがあるだろう。特にマンハッタンの地盤固いはず。なので、以前に地震を経験してその怖さを知っている者に対してはかなりの利点になるのではないだろうか。

まとめ

色々と思い付くことを書いてきたが、海外で行う仕事の快適さはおそらくその職場の雰囲気や仕事内容によるような気がするので、それが快適であれば上記が決定的になることはまずないのではないかと思う。むしろ、利点よりも欠点が影響するのではないかと思う。欠点はいわばある意味では制限とも考えることができるためだ。