レビューアーの要求がおかしい

日付;2021/03/06(土)

今日もマウスに薬剤を投与しに研究室に行く。今日は特に何もない、とても平和な一日だった。少し早めに行って、昨日まで解析していたウェスタンブロットの画像について考えていた。これは今投稿中の論文でレビューアーからの要求を受けた解析なのだが、実はちょっと微妙な結果である。ボス(と、多分そのボス達)が早く再々投稿したいらしく、結果を急いでいる。なので多少微妙だけど、もう投稿しようという運びになっている(と自分では理解している)。どうやら、今年6月のグラント申請に間に合わせたいらしい。おそらくそのグラントに、この論文の内容とそれまでに得られた結果を載せるのではないかと考えている。

しかしながら、このレビューアーの要求がとてもナンセンスである。1つ目は「着目している薬剤が、標的としているタンパク質の活性をちゃんと阻害していることを証明するための実験として、そのタンパク質をノックダウンしたときに、基質のリン酸化も同時に減るかどうか示す必要がある。」ということと、2つ目は「標的タンパク質が阻害されているならば、そのタンパク質の自己リン酸化も減少するはずなのでそれを示す必要がある。」ということが自分たちへの要求である。他に2つあるが、それは共同研究者への要求なので、そっちは任せてある。

直感的にこの指摘は正しいように思うが、両方の要求ともにすこし変なところがある。要は薬剤の標的への作用の得意性を示すための実験になっていない。まず1つ目であるが、標的タンパク質の基質のリン酸化は、他の論文ですでに証明されており、もはや一般的に知られていることとして考えることができる。実際、siRNAでノックダウンして確認したが、その通りになった。自分たちはすでに証明されている特異的な基質のリン酸化を結果中ですでに示している。それで十分である。他の二人のレビューアーもすでにOKしている。2つ目であるが、確かに阻害されているならば、自己リン酸化は低下しそうなものであるが、対象となるタンパク質の活性と自己リン酸化は直接に関連するかわからないし、それらの自己リン酸化部位が他のタンパク質によって制御されている場合もあるので、その薬剤で活性が抑えられていたとしても自己リン酸化が低下しているとも限らない。この2つ目の要求は厄介で、新しい問題も生じかねないし、そのアミノ酸残基はかなりマイナーで、そもそもそんなところに対する抗体だって世の中に出回っていない。実際、ある抗体を見つけてウェスタンブロットをやったけど、どうも抗体が汚い気がする。本当にこのレビューアーは医学生物学の研究者であろうか。どこかのハラスメント教授が学生という名の奴隷を使ってレビューさせているだけではないのか。

話はそれたが、ウェスタンブロットについて何を考えていたかと言うと、先に述べたsiRNAの実験についてだ。「確かもう一方のsiRNAの結果も悪くなかった気がする。というか、使ったほうが良いのではないか?それについても結果にまとめて、一応ボスに送っとくか。」とか考えていて、ちょっとだけ早めに家をでた。でも実際結果を見てみたら、なんか微妙だったので、要らんことはしないでおこう、となった。

ということで、マウスに薬剤を投与し、エンドポイントに達したマウスから対象臓器を摘出してきた。そして案外早く終わって良かった。