日付;2021/03/17(水)
昨日、レビューの依頼があった。どうやらpubmedにさえインデックスされていない論文誌のようだ。でもこの論文、知ってる教授がエディターをやってるヤツだったので、日頃お世話になってることもあり、レビューを引き受けることにした。Pubmedにインデックスされてないので、そんなに厳しく評価しなくてもいいだろう、筋さえ通っていて、レベルが低くても実験、解析に問題がなければ、Major Revisionで良いのではないか、と考えていた。
今日、その原稿を読んでみた。そして、甘かった。筋は通っているように思えるが、この著者、研究をナメてるのではないだろうか。なんと実際の実験は1個、多めに言っても2個。ある遺伝子に対するshRNAを使ってノックダウンして、その後、PCRとウェスタンブロットで発現を確認する、というヤツだ。にしても、PCRはqPCRじゃなくてゲルで流したヤツ(定量性は全くない。確認だけならOKか…)だし、ウェスタンは不適切なバックグラウンドサブトラクションだ。これは受け入れ難い。あとはデータベースサーチだ。といっても、なんかただ拾ってきた遺伝子をGEOのデータベースで検索し、それをグラフにまとめただけのような結果だった。
解析がしっかりしており、それでいて、新しく、そして重要な発見があり、それが顕著であるなら、最近の研究ではもしかしたらそれで良いかもしれない。しかし、この論文については全く解析が足りず、解析自体も良くない。こんなレベルの低い解析では、論文なんか無理だし、こんな粗末な論文のレビューアーになりたくない。レビューアーとしての品位に疑義がでないように、丁重にリジェクトにしようと思う。
救いなのは、同じ図のDuplicateでラベルだけ変える、などがなかったことだ。ちなみに、X国の研究者には、この同じ図のDuplicateがめちゃくちゃ多い。もちろん、その限りではないので論文で判断する必要があるが、自分のような下っ端に回ってくる論文は、そんなのがあまりに多い。
いつもそうなのだが、頑張ってmajor revisionにしようとするのだが、読めば読むほど駄目な部分が浮き彫りになってきて、全く看過できなくなる。医学生物学研究者って、本当にどうかしてんじゃあないのか。大学院で何を学んできたんだ。学んできたのは「確実にごまかせる手の抜き方」と「バレない不正方法」か?なぜ学位を取れるんだ。学位とは別に、たとえば、毎年行うコンプライアンスのオンライントレーニングみたいにデータ解析実技試験をやったらどうだ。こういったレベルの低すぎる研究だって、コンプライアンスの遵守違反として十分に引っかかることだと思うのだが。リサーチミスコンダクトの原因なのではないのか。
ただし、このエディターには研究でお世話になっている。この好で自分なりにどういった解析をやればよいのかを具体的に書いて送ってあげようと思う。