Scientific Reportsの個人的な評価

日付;2022/01/29(土)、2023/07/28(金)

研究結果を論文誌に投稿し、専門家たちの審査を経て出版するというのは、研究の成果を世の中に伝えるための一つの手段である。10年くらい前からPlos Oneをはじめとするオープンアクセスオンラインジャーナルが台頭している。そのオープンアクセスオンラインジャーナルの一つにScientific Reportsがある。ここでは、覚書としてこのScientific Reportsに投稿しアクセプトされたときの経験から、今後このジャーナルに出すか出さないかを記しておきたいと思う。

よく考えてからScientific Reportに投稿すること

結論は、個人的に結果が大事ならばScientific Reportsへの投稿はおすすめしない。もう2018年のことであるが、今でもなんとなく残念な気持ちになる。個人的には、余程の事情がなければ、もう出さない。以下が理由である。

査読は早くない。

まず、投稿からアクセプトまでの経緯を以下に記す。投稿の経験は1つしかないが、その査読期間は6ヶ月もかかっている。Scientific Reportsのページではレビュープロセスが迅速であることを謳っているが、それは全く正しくない。おそらく、審査のスピードはレビューアーとエディターに依存してしまうのだろう。

2017/06/01;投稿1回目。この間、フォーマットのチェックやレビューアーの割り当てでなんと1ヵ月以上も費やす。エディターのチェックが遅すぎると思った(これはある意味、レビュープロセスが適切な証拠です。適当なことを書いてしまって申し訳ないです@2023/07/28)。
2017/07/1;ようやくまともにレビューアーが決まり、査読開始。
2017/08/21;投稿2回目(再投稿)。
2017/10/02;再投稿の改定の要請。
2017/11/25;投稿3回目(再々投稿)。
2017/12/12;アクセプト。

この論文に投稿することを決めたのは、アメリカ留学直前(と言っても、もともとそれ以前からBMC Cancerに投稿していたが、これがもはや2か月たっても一向にレビューアーが割り当てられなかったので、こっちから願い下げしてやっっている。)であり、短期間でのレビューが必要であったためである。その時点では、レビュー期間がそんなに伸びるとは思っていなかった。Scientific Reportsでも出版までに迅速であると謳っている。他をあまり知らないが、比較的ニッチな分野な場合は、迅速である保証は全くないようだ。というか、専門分野っていうのはほとんどがニッチなので、結論として迅速ではないと結論づけたほうが良いかもしれない。

専門的な研究の場合、なんとなく知ったような専門家のところに査読依頼が行き、かなり厳しいコメントが返ってくる。

Scientific Reportsは科学的に妥当な手法で成された研究を掲載するというポリシーがある。そのポリシーの中には、科学における重要性や新規性の評価は含まれていないようだ。それなのに、かなり厳しいレビュー結果が返ってくる。「こういうこと聞いてくる奴らってアイツ等だな….」的な、なんとなくどのグループからのレスポンスか想像がつくようなコメントである。けっこう厳しいコメントである。それに、「あれを追加しろ。」だのと多くの要求を加えてくる。これは科学的に妥当は手法であれば良かったんじゃあなかったのか??

これも査読期間の長さを助長している。論文の内容にあまり関係のない内容を無理やりにも追加しなければならず、けっこう考えさせられる。同じようなレビューアーになってしまうなら、老舗の学会誌に掲載したほうが、多くの専門家に読んでもらえたのではないかと思うのはこういうところからである。

その割にジャーナルが設定している査読基準がヘボく、後々になってなんとなく残念な気分になる。

Scientific Reportsは科学的に妥当な手法で成されていればOKである。確か査読後にその時のチェックリストみたいなもが送られてくるのだが、それを見て、「これまでのレビューは何だったんだ….」と思った。この論文誌のポリシー通り、研究手法は正当か、とか、そういったチェックリストがいくつかあり、最低限それを満たしていればアクセプトだったらしい。こんなもので半年以上を費やしているのかと思った。

ジャーナルが結果の新規性や重要性を求めていない。

投稿時はこれはあまり考えていなかったが、時間が経つにつれてこの新規性や重要性が無くても科学的に妥当な手法で研究されていればOKってのが自己満足感に悪影響してくる。科学研究っていうのは、新規性や重要性ありきなので、それがないっていうのはCitationにつながってくる可能性がある。そして後に述べるように昨今ではScientific Reportsのインパクトファクターがどんどん下がっているため、みんなあまり見なくなっているように思う。この原因はおそらく出版数で、1年にものすごい数の論文が出版されている。一体なにが新しいのか、何が重要なのか、出版されただけではこの論文誌のポリシー通り全くわからない。

今(2022年1月30日)見てみたらScientific ReportsはNatureブランドのジャーナルから完全に切り離されていた(投稿システムがNatureの他のジャーナルと共有されていない)。なぜだろうか。Scientific Reportsはタダの金ヅルで、Natureブランドに悪影響するためだろう。Natureブランドがホームページに掲げてあるのはPhishingのためなんだろう。

インパクトファクターが年々下がっている。

自分自身や自分の研究のプロモーションで重要なのは、残念ながら論文誌のインパクトファクターである。このインパクトファクターが年々下がっており、2022年の時点では4くらいに落ち着いてしまった。4あったら十分じゃないかと思うが、非常に多くの研究に自分の研究が埋もれてしまうので、あまり良いくないように思っている。何の分野に属するのかよくわからないような応用研究ならそれで良いのだろう。しかし、明確に区分できるような研究分野なら、その専門の学会の学会誌に投稿したほうが、後々Citationにつながるように思う。そういった分野なら老舗の学会があるはずであり、そちらのほうが一定数の読者の目に留まるように思う。というのも、明らかにニッチな内容の論文だったはずなのに、なぜかそちらのほうがCitationが多いものも自分の業績リストにある。なので、頑張ってデータを出しており、それなにり良い結果であるならば、Scientific Reportsに出さずに、インパクトファクターが2くらいだったとしても老舗の学会誌に投稿するほうが良い。インパクトファクターを気にするならば、2から6なんてのは相当に低く、数字は違えど実質的には全部似たようなインパクトである。その2から6の差なんてのは、その分野の研究者の数が多いか少ないかみたいなもののように思う。

今はPlos OneやScientific Reportsごときでプレスリリースをやってしまう輩を全く理解できない。

結論

結論は「頑張って出した研究データで、その分野でなかなかに重要な興味深い結果であるならば、Scientific Reportsなんかに出さずに老舗の学会誌に投稿したほうが良い。」である。その研究がどの分野やどの学会にも属さないならば、Scientific Reportsを考えてみても良いかもしれない。それに、忘れてはいけいないのが、Plos OneやFrontiersブランドはどうか?ということであるが、これも当然、おすすめできない。よっぽどそのジャーナルが必要でない限り、インパクトファクターが低くても老舗の専門誌のほうが良い。