修士でアメリカの大学や研究機関に応募・就職する方法

日付;2022/05/29(日)

仕事から電車で帰宅する途中にふと思ったことがある。それは、単にアメリカに活動拠点を置きたいのであれば、修士を取ったタイミングでアメリカに留学出来るということだ。考えてみれば、アメリカの大きな大学で技術員やResearch Associate(RA; 研究助手)として働いている者は多くが修士だし、実際に自分もアメリカでポスドクをやっているときに3人ほどRAと一緒に働いたことがあるが、彼ら彼女らも修士であった。また、その時のボスも自分の嫁を技術員(RAではない)として雇うことを考えていたらしい。彼女も修士卒である。余談だが、自分はあの研究室で嫁を技術員として働かせるつもりは全くなかった。ボスの人間性がキツすぎる。絶対に泣くと思う。

そういうことで、おそらくアメリカの大学や研究機関次第では修士卒でも十分に仕事をできるように思う。アメリカで単に研究っぽいことをしたいのなら、別に博士まで取る必要はない。ただし、個人的な意見ではあるが、その場合には注意しなくてはならないこともあると思うので、その考えや実際にどうやったら修士でアメリカに就職できるのか、その具体的な方法を記しておく。ただし、これから書くことは理屈上おそらく上手くいくだろうということであり、実際に自分が試したわけではない。過去の経験からのかなり最もらしい推測、というか「修士アメリカ就職理論」であり、言ってみればその理論が十分に実証されたわけではないので、少し注意すべきだろうと思う。

狙うポジション

Research Associate(RA; 研究助手)

まず狙うのはResearch Associate(RA; 研究助手)という職である。このRAという人たちは、将来的には研究をする可能性もあるが、ポジション名通り、ボスが主に行っている研究や実験の手伝い、物品のマネージメントなどを行う人である。そして前述通り、おそらくラボや本人の能力によって研究活動も行うことになる。自分が所属していた大学には、Senior Research Associateという人たちも居た。彼ら彼女らは、上述通りラボのマネージメントを含めたボスの仕事の手伝いをしながら、自分でもちょっとずつ実験を行うという人たちだった。おそらくポスドクや研究員のように仕事内容は100%研究ではないが、他にも面倒なマネージメントっぽい仕事もするので、結構お金をもらえる。というか、逆に言えばポスドクの給与が低すぎる可能性はあるが、とりあえず似たような給与はもらえるという、悪くないポジションである。しかも、これは研究室やボスによるのだろうが、良い論文を絶対に出す必要がなく、ボスの思った通りに実験をやっていたり物品の管理をやったらいいだけなので、ポスドクや研究員より気が楽という特徴があるように自分には思える。しかし、これは言ってみればボスと密接にコミュニケーションする必要があることを意味する。なので、日本人にとってみれば英会話能力はもちろん、自分の意志を示す能力なども求められると思う。そういう意味ではもしかしたら現時点の日本の大学の修士レベルでは、その能力に到達するのは難しいかもしれない。

Technician(技術員)

もう一つ狙うことができるのは、Technician(技術員)という人たちである。これも研究室に依るのだろうが、RAのような半分研究半分マネージメントみたいなことはしないように思う。やることは実験の手伝いであり、ボスや研究員のリクエストに応じて、早くて上手な実験をするのが仕事になると思う。注意点としては「唯々手を動かす」いうスタイルであることが多いと思う。言い方を変えれば、技術員には研究に対して自分の考えを述べる余地はないに等しいことである。ポジションによる仕事内容が明確に決まっているアメリカでは、その性質がすごく強いかもしれない。「こうしないんですか?」くらいなら大丈夫かもしれないが、それよりも「XXとYYとIIIを抗体A、B、Cで染色ですね。わかりました。」と回答すべきポジションだろう。あまり我が強いと「君は技術員だろ??」とか言われたり、最悪クビになる可能性がある。この点がRAと異なる点である。利点としては上手な技術を提供することであり、自分のアタマを使う必要がないので、結構楽ということである。それに、ポスドク、研究員、RAよりも早く帰ることができる可能性もあるが、そんなのなので短時間で雇われているポジションかもしれないし、給与も少し安いと思う。

狙う大学や研究施設

修士卒でアメリカに留学し、技術員やRAになるためには、おそらく私立の大きい大学をメインに探す必要があると思う。募集があれば国立の研究機関でも良いが、おそらく私立の大きな大学が難易度は低めだろうと思う。国立の研究機関は、そういう人を雇ってくれるほど自由ではない可能性があるためだ。自分は以前、ニューヨークのセントラルパークのとなりにある医科学大学でポスドクをやっていたが、そこはかなり自由な雇用スタイルであり、修士卒でも少なくとも技術員として雇う器があった。特にニューヨークなんて、いろいろな人をバイアス関係なしに雇う!という考えがあったりするし、実際にかなり多国籍な人たちが働いており、そのために暮らす分には英語もかなりテキトウで良い。逆に、国立の機関ではこういう多様な人材をバイアスなしに雇用するというのは難しいかもしれない。

もう一つの可能性は、いきなり民間企業にメールしてみるという手もあるかもしれない。アメリカの企業なら日本とは違ってそういった担当の部署もあるだろうし、もしかしたら話くらいなら聞いてくれるだろうと思う。それでダメだったら良い経験だったと思ってさっさと次を探し、好感触ならそのままコンタクトを続けたらよい。

どうやって探すか

以前書いた記事で述べたことと同じなのでここでは割愛するが、JREC-INResearchgateLinkedin、それに加えて、最近ではJobRxivなんてのがある。アメリカでポスドクをしているとき、同フロアの別のラボのPI(Principal Investigator)がここで募集していた。

ちょっと見ただけでResearch Technicianの募集があった。

上述したように狙うのは私立の大きな大学、例えば、ニューヨークであればコロンビア大学とか、マウントサイナイ医科大学とかである。スローンケタリングがんセンターなんかももしかしたら募集しているかもしれない。

私立の大きな大学は、このような職種の採用は完全にPIの裁量できまるので、採用されやすい。修士でのアメリカ進出の取っ掛かりとしてはかなり良いと思う。個人的に非常に重要で考えさせられるポイントだと思うのが、ポスドクとほとんど同じ形式で募集されているということだ。これもPIの裁量で採用されるということの一つの証拠であることだろう。そしてその研究室に無事に就職して、そのPIに気に入られれば、RAにしてもらって自分の研究もできるようになり、さらに業績を残すことで、例えばLab ManagerやResearch Specialistとかのポジションになれる。これらのポジションは実際に修士卒の人たちがやっていることもかなり多い。

ビザ

ビザはJ-1になるだろうと思う。J-1ビザは研究交流のためのビザである。もしアメリカでRAや技術員として採用されたら、その大学や施設がスポンサーになってこのビザを得る。J-1ビザ取得の際に出版した論文などの成果物が必要になるが、それについては修士論文かなんかで良いように思う。それにもしかしたらこんなものポスドクや研究員にしか必要ないかもしれない。J-1ビザはスポンサーがすべてであり、スポンサーがOKって言えばそれでOKである。詳しくはここでチェックしてほしい。自分は語れるほど知らん。

J-1ビザで注意しなくてはならないのは、満了時後2年間は母国で働く必要があり、その2年間はアメリカに就職することができないということである。これにならないようにするためには、与えられたJビザの期間内、もしくはビザが切れる手前で例えばHビザなどに切り替える必要があることだ。研究機関の研究職のいいところは、このHビザをサポートしているところが多いことだろうと思う。これは一般的な企業にはない利点と言える。

修士の2年間で何を勉強するべきか

RAや技術員として就職場所を見つける(募集のあった研究室に応募したり、面談を受けたり、実際に採用されたり等)よりも重要なことが、それに向けてどんな勉強をすべきかということである。ここではRAと技術員として、その技能があれば大丈夫という観点から述べることにする。

実験手技について

日本での一般的な修士は二年間だろうと思う。もしRAや技術員として、またはそれに関連するポジションとしてアメリカの民間企業に応募を検討しているのなら、やっぱり今自分が勉強している分野はちゃんと理解しておく必要がある。その理由は、その研究や技術を担保にしてアメリカでのポジション探し(履歴書やレジュメの提出や雇い主となるPIとの面談)に臨むことになるためだ。その時点で在席する研究室ではどんな実験を行っているのかしっかり説明できなければならないし、アメリカで在席する研究室で行っている似たような実験や、自分でやったことがない実験だったとしてもすこし指導されたら確実にこなせるくらいの対応力は必要である。具体的には、その実験で使用する試薬や実験機材のデータシートを読んで、一連のプロトコールをWordかPower Pointにまとめ、各ステップをちゃんと説明でき、それに従って実験するくらいの能力は欲しい。それがRAや技術員に対して最も望まれる能力であると思う。もしかしたら修士で在席している研究室が「忙しすぎてそういった勉強することができない!」みたいなことがあるかもしれないが、もしその研究室でやっていることに同意ができず、かつ、自分のキャリアに対して何の利益もないようならば、教授や准教授に怒られたとしてもそこの研究室の仕事はテキトウに済ませて、自分のキャリアの糧になる勉強をするべきだろうと思う。そうしなければ、そこの研究室でやっていることは無駄でしかないし、もしかしたら病気になってしまうかもしれない。

参考までに、修士レベルというのは、「研究の指示があれば、その研究を行うことができる」というレベルである。まさにRAや技術員に望まれる能力が修士である。

コミュニケーション能力

実験については学ぶのはそんなに大変ではないだろうと思う。大学では論文も読めるし、実際にその実験や研究分野に携わっているためだ。しかし、実験に関する専門知識と同じくらい重要なことに、英語でのコミュニケーション能力がある。これはある意味ではポスドクよりも必要となる。

その理由は、上述したようにRAや技術員には、PIや研究員のリクエストに応じて実験をすることや、物品の管理のような簡単なマネージメントも必要になるためだ。これらの仕事はPIや研究員の望むことをちゃんと聞いて理解する必要があるし、最悪、反論することで自分の身を守る必要がある。アメリカでは日本より反論しやすいが、逆に日本よりも反論する確固たる正しい(と考えられる)理由が必要で、それを上手に表現する必要がある。はっきり言って、日本の修士卒の者にとってRAや技術員としてアメリカ留学することの最大の障壁は、専門知識のなさよりもこのコミュニケーション能力であるように思う。注意しなくてはならないのは、英語や日本語には関係のない、相手の言っていることを理解して、かつ、自分の要求を通す、とか、相手の望むことをちゃんと質問する、だとかの、そういったコミュニケーション能力が必要ということである。日本人はこの点が圧倒的に不足しており、というか、相手のことも考えたうえでそれをちゃんとできる修士卒の人間なんか、おそらく数えるまでもなくゼロに等しい。英語が話せるだとか話せないだとか、そういうことは表面上の問題でしかない。日本の修士までの教育でこういった能力を身につけるのは不可能であることも深刻な問題である。もちろん、学士を取った時点で海外の修士課程に留学するという作戦もあり、その場合は日本で取った修士よりも圧倒的に高い能力を手に入れることができる。学術において博士を取った後にポスドクや研究員としてアメリカに留学することが多いのは、博士卒くらいのレベルでそういったコミュニケーション能力を獲得できるためである。逆にいえば、修士でそのようなコミュニケーション能力を身につけることができるならば、ポジションとしてはポスドクではなくなるだろうが、同じように海外に留学することが可能である。

働くうえで注意しなくてはならないこと

考え方

修士卒の学術・知識のレベルというのは、その本人がどれだけ勉強してきたかに寄らず、本気で研究をしている博士取得者にとってみればゴミである。なので、どれだけ自分で頑張って勉強してきても、他の研究者らと対等にディスカッションできるとか、そもそもそのディスカッションで彼らに勝てる!とか、絶対に思わないでほしい。何度もいうが、どれだけ良い大学を出て、どれだけ勉強してきたとしても、博士を頑張って取った者たちに経験でも解析能力でも実験能力でもかなうことがない。むしろ、そういう考えを持つ者はRAとか技術員とかに不向きなので、考えを改めたほうが良いと思う。考えてみてほしい。自分と同じような考えを持って博士課程にいって実際に良い論文を書いて来た者である。自分がそのまま博士に進んで、良い業績を得て、それを元手にその大学に研究しに来たことを想像すれば、勝敗ということでは勝つ見込みなんかない。なので、純粋に研究の手法を勉強したい、とか、できればアメリカの研究室のマネージメントを勉強したい、とか、そういう考えで行ったら良いと思う。そっちのほうが、教え甲斐もある。

ボスが期待することの理解

コミュニケーション能力のところでも述べたが、これは仕事の目的がラボマネージメントや研究の補助がメインであるRAや技術員には特に重要である。雇い主は大学の施設というよりその研究室のPIであるので、その雇い主のいうことには従う必要がある。それに、あまりにも失敗が多かったり、抵抗が多かったりするのはかなり良くない。上述したように、このような大学や研究機関は雇用者であるPIの裁量がとても大きく、採用されやすい。これは逆もそうである。すなわち、雇用者であるPIが気に食わないならば、簡単に解雇されてしまうことになる。実際、以前アメリカで在席した研究室の2人目のRAは、総合的な実力が劣っていたことと、ボスと折り合わなかったことが原因でクビになってしまった。そして、こういうことを言っている自分も2018年1月にクビになりかけたと思う。さらに、この研究室を去る2022年3月には、自分からその研究室のボスと距離を置いたことがある。実際には研究室を去るまでに済ます実験が多すぎて話す時間もなくなっていたのだが、こういうときもクビになる可能性が高いと思う。

ちなみに、自分が在席中の1人目のRAはとても優秀だった。そのボスとの関係もかなり良いように見えたし、自分でも論文を、確か彼女が在席した6年か7年くらいの間に第一著者で2報も出していたし、研究室のマネージメント、特に物品管理がしっかりとなされていた。彼女はこことは別の大学で研究している。3人目のRAは、正直に言えば個人的にあまり好きではなかったので良く知らないのだが、修士を出て間もない修士保持者であり、上述の通り研究の知識や考え方が全くと言っていいほどなく、それでいて無駄に賢い人だったので、こっちとしてみればストレスでしかなかったが、PIの言うことだけはしっかりと聞くような人間だった。それに加えてコミュニケーション能力も高かったので、PIとの関係はすごく良いように見えた。きっと今でもそうだろうと思う。余談だが、彼女が主に従事していた研究では良い結果が得られているのだろうか。正直言って、自分はあの研究が上手くいくとは思えなかったので、今ではどんな進捗なのかちょっと気になるところである。知識や経験が全くなくてもRAや技術員は務まるが、研究するとなるとやはり知識や経験が必要になるってことなんだろう。

ポスドクや研究員はどんな人たちなのか

RAや技術員、特に技術員として働く場合は、ポスドクや研究員とはどんな人間なのかも覚えておいたほうがよい。まず、彼らには業績が必要である。それに、その業績はなんでも良いか、と言われれば、それも違う。自分で考えた理論なり仮説なりを実証したりする研究業績っていうのが必要である。それはそんなに簡単なことではない。彼ら彼女らの多くはそれが好きか、それを本当に形にしたいと思って仕事をしているので、仕事自体はキツくても続けている。しかし、そういったプレッシャーにさらされていることも事実であり、かなり気難しい人が多いように見える。逆に、何に対しても優しくて、大らかで….みたいな人間は、少なくとも東海岸にはいないのではないだろうか。

そういう人間なので、実験技術や成果への要求はかなり厳しいかもしれない。特に、そのボスが厳しかったりしたら、技術員というよりそのポスドクや研究員がキツい言われ方をするので、やはりその依頼先である技術員にもキツい条件が与えられるように思う。ポスドクや研究員の多くがそういう人間であることを覚えておいて全く損はない。もしそういった関係性に対するのが苦手だったり嫌いだったりする人であれば、それはアカデミックやそれに似た職種につくのは不可能と思ったほうが良い。

自分のキャリア

最近は企業などもだんだんと元アカデミック(大学や研究機関)の人間を採用するようになってきている。注意すべきなのは、日本でもそのような風潮もあるにはあるが、それは完全に見かけ上のみ、もしくは売り文句上のみの話であり、新卒採用と基準は変わらないことである。つまり、日本の企業が「アカデミック出身者の応募も歓迎します。」とか募集に書いていたとしてもそれは書いてあるだけで採用するつもりは全くない、ということである。ウソではないことがそのタチの悪いところで、実際は「タレント性が高く、外受けが良いアカデミック出身者を望んでいる。」ということである。これは民間企業からしてみれば当然である。金にならなければいけない。その一つの証拠として、民間企業で論文を書いているようなところはほとんど見かけない。つまり、本当にアカデミックな仕事をしてきた人間が活躍できるとは言えないということである。

愚痴はこのくらいにして、話を戻すと、今はアカデミック出身者にしてもその後のキャリアが多様化してきているということである。これは、修士卒でアメリカに行ってアカデミックの職についた人ならば、その後のキャリアの選び方次第でかなり魅力的な職につける可能性があるということだ。例えば、そのままSenior Research AsociateになりHビザを経てグリーンカードを取得してそのままアメリカで暮らす、日米問わず大きな製薬会社のマネージャーになる、別の職種のアカデミックに着くなど、年齢が若く柔軟であり、研究にあまりこだわることができない分、アカデミックや民間企業と選択種も多様である。

一方、ポスドクや研究員に比べて、アカデミックなキャリアは形成しにくく(要は博士さえとっていないので、自分で研究テーマを打ち立てるほどの研究能力はない。)、逆に多様な分、次の職について常に探しておかなければ、次に良いポジションにつけるとは限らないと言える。これはポスドクでも研究員でも同じであるが、ポスドクや研究員がそれまでのキャリアを活かそうと思えば、どうしても似たようなポジションになってしまい、多様性という意味ではRAや技術員より低い気がする。実際、ポスドクや研究員で多様性を重視するならば、それまでのキャリアから少しはなればポジションになってしまう可能性が高い。だからこそ、RAや技術員は、当然ポスドクや研究員でもそうだが、常に次の職について考えていなくてはならない。世の中には一体どんな会社が存在しており、そこにはどんな職種があるのか、自分が得意な分野や技術は何かなどを常にチェックしておく必要がある。それが出来ていれば、チャンスが来たら動けるだろうし、何かあっても案外冷静に行動できるはずである。個人的には、実際の就職活動を含めた準備に2年は必要である。これには、上述の会社、分野、自分の置かれた現状、自分の好みの理解や、それにかかわるネットワーキングづくりに必要な期間も含まれている。なので、仕事に慣れてきたら、少しずつでもそれを始めなければならない。

まとめ

修士卒でもアメリカの技術員や研究助手に応募でき、さらに大学や研究施設次第では案外簡単に就職できる。募集先を探すにはJREC-INやJobRxivなどが便利である。就職はできるとして、それまでの勉強がむしろ問題である。当然ながら自分の専門分野を修士に相応しい程度に持ち合わせる必要があるし、その分野で一般的に利用される実験手技は、知らない場合であってもすぐに適応できるくらいの能力は必要である。さらに、英語も含めて、PI、ポスドク、研究員と上手にコミュニケーションをとる能力も必要であり、これは現在の日本の教育では不十分な可能性もある。専門分野での知識より、こちらのほうが難しいので、修士に入った時点で勉強を始めなくてはならないだろうと思う。技術員や研究助手の職に就いたら、自分の得意分野や興味についてまとめておき、さらに、どのような会社や大学や研究機関があるのか、そのためのネットワークづくりをしておくのが良いだろうと思う。この点においては技術員や研究助手を問わず、どんな職種のどんなポジションでもその通りだと思う。